松井監督も「侑司のあの足があってね、相手にプレッシャーがかかる。去年の怪我があったが、順調にきているのはチームにとって非常に大きい」と、頬を緩めた。

　常にチャレンジし、一つでも先の塁を狙う。キャンプから徹底してきた松井イズム「走魂」。この日から一軍合流だった金子がそうした姿勢をすぐに見せたことからも、チーム全体にしっかり浸透していることが窺い知れる。

　また、こんな場面もあった。

　金子が２つ目の盗塁を決めた３回表。２死二塁でマキノンのレフト前ヒットで、金子はホームを狙ったが、打球が速かったことなどから、三塁コーチャーの黒田コーチがギリギリでストップ。金子は黒田コーチと接触しそうなくらいのところで急ブレーキをかけ、三塁へ戻った。足への負荷が気になるシーンだった。

「黒田さんからは、僕だから（ギリギリまで）引っ張ることもあると、常々話はしていました。ホームに還れるなら、還ったほうがいいですし。ちょっと止まるのは大変でしたけど、逆に問題がなかったので、自分の中でもこれでもしっかり大丈夫というふうにはなりました」
  　試合でないと起こらないプレー。今回、そこを確認できたことを金子は大きなプラスと捉えていた。

「まずはこうやって、開幕前に一軍に合流できたので、あとはもう自分のやれることをやっていくだけです。（打つ方では）感覚は悪くないというものもありますが、開幕に合わせてもっともっとという気持ちもあるので、試合はありますが、練習もしっかりやっていきたいと思います」

　この日は守り慣れているレフトではなく、ライトの守備に入り、「臨機応変に対応していきたい」と開幕一軍へ、貪欲な姿勢を見せていた金子侑司。獅子のスピードスター復権へ、まずは力強い一歩目を踏み出した。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠（いわくにまこと）：1973年３月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のＡＤとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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