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プロ野球

将来像は佐々木朗希より“投手・大谷”?高卒3年目で快投を続けるオリックス・山下舜平大の驚異の成長曲線<SLUGGER>

西尾典文

2023.05.09

 ただ、将来性は高く評価しても、プロ入り後に時間がかかると判断していた人も多かったのではないだろうか。同じ学年では前述した高橋や中森俊介(明石商→ロッテ2位)、小林樹斗(智弁和歌山→広島4位)の方が大舞台での経験もあり、早く一軍の戦力として期待できる声も多かった。実際、高橋は2年目の昨年にブレイクし、今年はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも出場している。ただ、今シーズンのここまでの投球を見れば、すでに高橋と並んだと感じている人も多いだろう。

 その理由として大きいのは、安易に球種を増やすのではなく、最大の武器であるストレートを磨き続けたという点が大きいのではないだろうか。高校時代はカーブしか投げていなかったことは前述したが、今年もここまでフォークが増えただけで変化球は2つの球種しか投げていない。もちろんこの2球種の質も高いが、ストレートが素晴らしいからこそ変化球の威力も増していることは間違いないだろう。平均球速は150キロを優に超えており、空振りを奪える割合も高い。これまでの2年間で二軍で実戦経験を積みながらも、ストレートを磨いてきたことがここまでの活躍につながっていると言えそうだ。

 そしてもう一つ顕著なのがフォーム面の変化だ。テイクバックの動きが目に見えて小さくなり、身体の近くで腕を振れるようになったことでコントロールも安定し、打者にとってもボールが見づらくなった印象を受ける。また下半身の躍動感も高校時代から明らかにアップしており、フォームのバランスの良さも出色だ。体格や雰囲気も含めて、大げさではなく大谷翔平(エンジェルス)を彷彿とさせると感じたファンも多いだろう。
 将来像としてもやはり近いのは投手としての大谷ではないだろうか。よく佐々木を大谷と重ねることがあるが、フォームなどを見ても大谷に近いのは山下のように見える。そして末恐ろしいのはまだカーブとフォークしか投げずにこの成績を残している点だ。今後大谷のように球種を増やしていくことができれば、若いうちからメジャーリーグで活躍する可能性も高くなるだろう。

 あと課題を挙げるとすれば1年間を通して投げる体力面であるが、この点については故障さえなければ順調にクリアしていく可能性は高いだろう。それを考えると今年のベンチマークとしたいのが1学年上である佐々木の昨年の成績(20試合9勝4敗、防御率2.02)だ。勝敗と防御率はもちろんだが、特に狙ってもらいたいのが奪三振率12.04、WHIP0.80という数字である。これはいずれも先発投手としてはなかなかないレベルの成績だが、今の山下を見ている限り、決して不可能ではないはずだ。

 日本だけでなく、メジャーでも佐々木と山下が超ハイレベルの投手タイトル争いを繰り広げる。そんな未来も十分に期待できるだろう。


文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
 

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