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プロ野球

ついにベールを脱ぐ元サイ・ヤング賞投手トレバー・バウアー。トラッキングデータから探る「長所」と「弱点」<SLUGGER>

大南淳【DELTA】

2023.05.02

5月3日の広島戦でついに一軍デビュー予定のバウアー。どんなピッチングを見せてくれるだろうか。写真:AP/アフロ

5月3日の広島戦でついに一軍デビュー予定のバウアー。どんなピッチングを見せてくれるだろうか。写真:AP/アフロ

 トレバー・バウアー(DeNA)の一軍デビューがいよいよ近づいてきた。ここまでファームでは圧巻の投球を披露。2020年にサイ・ヤング賞を受賞したMLBでもトップクラスの実力を、日本のマウンドでも存分に発揮することが期待されている。

 バウアーといえば、データ分析を用いて自らのパフォーマンスを向上させてきたことで知られる。言わば、現代野球を象徴する投手だ。今回は、バウアーがMLBでどのような球種を投げてきたのか、トラッキングデータに着目しながら強みと弱みを明らかにしていく。

 まず、バウアーは奪三振の多さで他投手と差をつけるタイプだ。2018~22年にMLBで500イニング以上を投げた投手に限定すると、奪三振割合(奪三振÷対戦打者)はMLB7位の30.4%[1]。あのダルビッシュ有(パドレス)でも28.8%(11位)であることを考えると、バウアーの奪三振能力の高さが分かるだろう。

■2018-2022 MLB奪三振割合ベスト10
1 ジェイコブ・デグロム 35.5%
2 ゲリット・コール 34.9%
3 マックス・シャーザー 33.5%
4 ジャスティン・バーランダー 33.0%
5 コービン・バーンズ 32.2%
6 ブレイク・スネル 31.8%
7 トレバー・バウアー 30.4%
8 ロビー・レイ 30.2%
9 ブランドン・ウッドラフ 29.8%
10 シェーン・ビーバー 29.3%
※500イニング以上を対象。データはFanGraphsを参照
 
 これだけの奪三振を生み出すバウアー最大の武器は4シームとスイーパーだ。
 
 4シームは全体の約40%を占めるバウアーの最も多く投げるボールだ。平均球速は151.1キロ[2]。スピードは平均クラスにもかかわらずMLBの強打者たちを苦しめてきた。その理由がスピン数だ。バウアーはボールにスピンをかける能力が極めて高い投手である。4シームのスピン数はMLBでも上位1%に入るレベルにある。

 このスピンの多さが一つの要因となり、バウアーの4シームはいわゆる伸びるような上方向への大きな変化を見せる。2021年には平均的な4シーム[3]に比べ9.9センチ上方向に変化していた。この4シームが投球の軸である。

 ただ、スピンをかける能力が生きるのは4シームだけではない。横に曲がるスイーパーも同様だ。スイーパーとは、近年注目されてきた「横に大きく曲がるスライダー」のことである。大谷翔平(エンジェルス)が多投するようになったことで、ご存知の方もいるだろう。

 バウアーもこのスイーパーを武器とする投手だ。2021年に投げたバウアーのスイーパーは平均[3]よりも約3.3センチ横方向に変化していた。今季の大谷と同程度の横変化と聞くと、その変化量の大きさがイメージしやすいかもしれない。

 この2球種にカットボールやカーブも含め、基本的には速球、そして利き手とは逆方向に曲がる球で打ち取るのがバウアーの投球スタイルだ。特に4シームとスイーパーはMLBでも本当のトップクラスの凄みを見せているボールである。
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