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プロ野球

いまだプロ初勝利はお預けもルーキーとは思えぬマウンドさばき… 楽天ドラ1・荘司康誠は、なぜクレバーなスタイルを確立できたのか?<SLUGGER>

氏原英明

2023.05.17

 もともと荘司は、自身で考えてやるタイプの選手だ。

 名門・新潟明訓高の出身だが、高校3年時は春夏ともに県大会初戦敗退。チーム作りがうまくいかず、荘司のポテンシャルも生かされなかった。文武両道のチームの考え方もあって、勉強で手を抜かなかった荘司は指定校推薦を勝ち取って立教大へ進学した。

 自力で名門の扉を叩けるだけの学力があり、本を読んだり勉強したりするのも苦ではない。文武両道の重要性はあらゆるところで唱えられるが、それは単に「学業成績が良い」というだけではない。勉強する習慣を持っている人間は、何かにつまずく時が来たとしても、しっかりと自分で立て直すことができる。
 
 大学進学後に右肩を故障した時も、トレーニング本などで体の動きを理解した。腕利きのトレーナーとの出会いもあって、自分で考えながら成長を遂げることができた。3年秋に頭角を表すと、4年春にはエースに。1学年下には甲子園を沸かせた有名な投手もいた中で、進学時は無名だった荘司は大学トップクラスの投手となり、ドラフト1位指名も勝ち取ったのだ。

 荘司は自身の野球人生を振り返ってこう語っている。

「野球の練習の中には『うーん、これは? どうなんだろう』と思うことも時にはありますけど、受け取り方は人ぞれぞれで、それをどう生かすかで変わると思うので、自分で考えながらやってきましたね。時に細かすぎるとか、考えすぎと言われることもありましたけど、自分の持ち味と思って活かしてきました」

 マウンド上でのクレバーなところは、頭脳をしっかり使えていることに他ならないだろう。また、グラウンド外においても「1勝の難しさ」や「プロの洗礼」などとルーキーは何かと騒がれることは多いが、それらも想像の範疇内のことで、そこだけで一杯一杯になるわけでもなかった。

 とはいえ、勝利を挙げられなかった現実は直視している。

 西武戦後、こうも語っている。

「1勝を挙げることは簡単なことではないと思っていましたけど、やっぱり、少しの気も緩められない。ずっと集中して自分のベストパフォーマンスを出さなきゃ勝利につながらないというのは感じたので、次の試合に生かしていきたいですね」

 楽天の大卒ドラフト1位ルーキーというと、どうしても13年に新人王を手にした則本昂大の姿を想像してしまう。同様の高いハードルを設定されて、思うように成績を残せない投手は過去にもいた。だが、これまでの荘司の話を聞いてもらえれば、則本とはまるでタイプが異なることが分かるだろう。

「ピンチのところでしっかり低く集めて投げ切ってくれた。そこから先を許さないというのは投手にとって大事ことなんで、それはできていた。引き続き粘っていく中で、学んで数多く勝てるようになってほしいですね」

 石井一久監督が荘司についてそう語っているように、則本のように1年目から主力としてバリバリ活躍してほしいとは考えていないだろう。いずれエースになる素材であることは間違いないが、まずは学びながらエースになってほしいと願っているはずだ。

 初勝利はやがてつくだろう。それよりも、荘司には「いずれエースになる」大きな器があるということを忘れてはならない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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