粋なことを言うドラフト候補だ。

「人生に一度しかないことなので、不安もありますけど、指名されるまでの時間を楽しみたいと思いますね」

　2022年のドラフト上位候補として名前の上がる立教大のエース荘司康誠は、スマートな考え方の持ち主だ。

　新潟明訓、立教大と名門校を進んできたが、野球だけで生きてきたわけではない。新潟明訓は一般受験で入学したし、立教には指定校推薦でやってきた身なのだ。

「一個しかできないというのはあまり好きじゃなくて。高校の時に大学で野球をやりたいとは思っていたので、勉強をしっかりやっていこうと。指定校推薦がたくさんある学校でもあったので、そこは意識していました」
  　高校３年の夏は１回戦で敗退。当時のストレートのMAXは140キロにも満たない程度で、注目された選手ではなかった。

　それでも勉強はしっかりやってきたから、名門のユニフォームに袖を通すことができた。そうした経歴もあって、荘司の強みになったのはやはり思考力だった。

「そこを自分の強みにできたことは大きかったですね」

　大学に入って１年目の夏を終えた頃から、荘司は右肩のインピンジメント症候群に苦しみ、思うようなピッチングができなかった。しかし、この雌伏の期間が功を奏した。

　本を読むことが苦ではなかった荘司は、身体について学ぶ機会を得て、探求していったのだ。

　加えて、オンラインサロンなどでも情報を収集。ウェイト・トレーニングだけではなくて投球フォームの改善にも着手して、効率よく自分を鍛え上げてきた。

　大学２年の11月に復帰を果たすと、最初のブルペンで自己最速の142キロを計測。そこからさらにトレーニングを重ねていくと、球速は145キロをゆうに超えるようになった。そして、３年のオープン戦ではついに150キロに到達したのだった。