専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

契約金は相場以下だったネトがドラフトから1年未満で正遊撃手へ。型破りの才能を見抜いたエンジェルス首脳の慧眼<SLUGGER>

ジェフ・フレッチャー

2023.05.25

 エンジェルスのスカウト部長としては、昨年が初めてのドラフトだったマックルベインによれば、チームの意思決定者全員がネトを指名するべきだとの意見で一致していたという。だがそれは、彼特有の風変わりなスウィングを分析してからのことだった。ネトのレッグキックはかなり大きく、左足をまるで投手と同じくらい高く上げる。極端にレッグキックが大きいと剛速球に振り遅れ、緩い変化球にはタイミングを合わせづらい、というのが球界の常識だ。

「私も最初は懐疑的だった」とマックルベインは言う。「だが、彼の映像を見ると、どんな時でもタイミングをしっかり合わせている。決して振り遅れることがないんだ。メジャーでは投手の球も速くなり、どうしても心配になる。だが、大学で剛速球を投げる投手と対戦する時でも彼はいつもうまくタイミングを合わせていた。言ってみれば天性の才能だね」

 ネトによると、あの独特のレッグキックは高校に入る前から始めていたという。彼は、ジャスティン・ターナー(現レッドソックス)やハビア・バイエズ(現タイガース)といったメジャーリーガーを模範に自分のスウィングを作り上げた。ネトはまた、状況に適応するのも巧みだ。2ストライクに追い込まれた時や、投球動作が素早い投手と対戦する時はレッグキックを封印する。
「あんまり急いでスウィングをいじるのは、コーチとしてはあってはならないことだ良」とエンジェルスのマーカス・テームズ打撃コーチは言う。「まずは彼に任せてみるつもりだ。彼には独特の感覚があって、これまでうまくやってきているからね。傍から見て風変わりだからと言って、それをいじるのは良くない」

「『このレッグキックじゃ成功しない』と言われると、それが間違いだってことを証明してやるという自信につながるんだ」とネトは言う。「僕はずっとそういう人たちが間違っていることを証明してきた。だから、このビッグステージでも自分が通用することを証明したいんだ。これまでやってきたスタイルでね」

文●ジェフ・フレッチャー

プロフィール:『オレンジカウンティ・レジスター』紙でエンジェルスのビートライターを務めるベテラン記者。アスレティックスやジャイアンツでも番記者を務め、全米野球記者協会(BBWAA)の一員として、殿堂入り投票権も持つ。昨年、大谷翔平についての著書『SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(徳間書店)を発表した。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号