WBC組に加え、田嶋大樹、山岡泰輔、山下舜平太なども結果を残している中、山﨑のポジションは安泰ではない。

　チャンスをもらえているのは他に同タイプの投手がいないことと、現在のチーム事情もかかわっている。通常の土曜日のゲームは、本来は山本由伸の登板日だが、20日に発熱に伴う体調不良で戦線を離脱していた。

　登板機会が与えられたのはそうした事情も考慮してのことだろう。そんな中での快投は非常に価値があると言える。

「勝ちもつきましたし、長いイニングを投げて、さらに高橋（光成）くんにも勝ったんで、そこは嬉しいです。ただ、シーズンは長いんでまだ何があるか分からないので、次も同じようなピッチングができるようにしていきたいですね」
  　山﨑は昨季、レギュラーシーズンの成績こそ振るわなかったものの、26年ぶりの日本一に輝いた日本シリーズでは２試合に登板して１勝０敗、９イニング無失点の活躍を見せた。また、３打数１安打１打点１得点とバッティングでもチームの勝利に貢献している。

　そんな流れもあり、今季はローテーション入りを確実にしなければいけないシーズンだった。淡々とした語り口は相変わらずだが、目先の結果に一喜一憂しないところに、山﨑がシーズンを通しての結果にこだわっているのが読み取れる。

　この１勝はとてつもなく大きい。

　個人的にはそう思う。そして、今週からは交流戦も始まり、セ・リーグ主催試合ではバッターボックスに立つこともある山﨑は一層輝きを増すことだろう。昨季は３試合で２勝。今季も同様の活躍を見せれば、“真のローテーション入り”も夢ではない。

取材・文●氏原英明（ベースボールジャーナリスト）

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき／1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』（新潮社）、『baseballアスリートたちの限界突破』（青志社）がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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