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MLB

【DELTA】カウント球としても決め球としても有効な万能球スイーパー。大谷は球界屈指の横変化を誇る一方で"弱点"も<SLUGGER>

DELTA

2023.07.14

 この万能性が、スイーパーが流行する理由と言っていいだろう。強いて弱点を挙げるとすれば、右投手であれば左打者、左投手であれば右打者に対しては効果が小さくなることくらいだろうか。

 そして、このスイーパーの最高レベルの使い手が大谷だ。昨季、今季とスイーパーの投球数はMLB最多。昨季は平均的な投球に比べてスイーパーを投げることで25.2点失点を少なく抑えたと評価されている。これはMLBでダントツの数字だ。

 大谷のスイーパーが極めて高い成果を挙げられるのは、その曲がりの大きさによるものだ。一般的なスライダーは横方向に約14.7cm曲がるのに対し、大谷のスイーパーの横変化は約42.2cm。ボール3個分以上大きく横に曲がると考えてもらえれば、変化の大きさがイメージできるだろうか。一般的なスイーパーでも横変化量は36.8cmで、それに比べてもかなり曲がりが大きい。

 なぜ大谷はこれほど変化の大きいスイーパーを投げられるのだろうか。それは優れたスイーパーを投げるために必要なポイントを数多く押さえているためだ。具体的には●フリスビーのように回転軸が真横に近いこと ●一定以上の回転数を備えていること ●ジャイロ成分が少ない、効率の良い回転をかけられていること ●2シームの握りで投げていることなどが挙げられる。
 ただ、実は大谷のスイーパーは今季、昨季ほどの威力を発揮できていない。ここまで、被打率は.169に封じているものの8被本塁打。昨季はシーズン全体で6本だったから、倍以上のペースで打たれていることになる。

 これは制球によるところが大きい。ストライクゾーンの枠周辺、いわゆるいいコースに投じられた割合を表す「Edge%」を見ると、昨季の42.6%から38.7%に低下。また右打者の内角高めへの抜け球も増加しているようだ。投球全体のBB%も昨季の6.7%→10.6%と大きく悪化しており、後半戦の課題はこのあたりになってくるだろう。

 6月、7月とスイーパーの投球割合は低下しているが、大谷にとって重要な球種であることに変わりはない。今後、大谷はスイーパーをどのように修正していくのか。ここも、後半戦の注目ポイントになっていきそうだ。

[1]データは7月5日時点
[2]データはBaseballsavantを参照

文●DELTA

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。

 
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