●トレード・デッドラインではどれくらい選手が移籍するの?
毎年数件あれば盛んな方だと言われるNPBとは異なり、MLBはデッドライン当日にもなれば一日に数十件規模でトレードが行われる。昨年は最終日の8月2日だけで27件のトレードが成立し、計69人もの選手がチームを移った。1日の最多成立件数はウェーバー経由でのトレードが廃止された19年で、7月31日だけで30件ものトレードが成立し、計63人がチームを移った。
わずか1日でこれだけ多くのトレードが決まると、情報をフォローするだけでもかなり大変。選手はもちろん、メディア関係者にとってもトレード・デッドラインは一年で「いちばん長い日」となるのだ。
●トレードは球団間だけで決められるの? 選手の意向は反映されないの?
基本的には球団主導で動き、選手の意向は反映されない。トレードが決まって「まさか自分が放出されるとは……」と、呆然とする選手も少なくない。
ただ、中には契約に「トレード拒否権」を盛り込んでいる選手がいる。たとえば、千賀滉大が昨年12月にメッツと結んだ契約には全30球団に対するトレード拒否権が付与されており、仮にメッツが千賀を放出したいと思っても千賀本人の同意が必要となる。
実際、前述した昨年のホアン・ソトのトレードでは、パドレスからエリック・ホズマーが交換要員の一人とてナショナルズへ行くはずだった。だが、ホズマーの契約にはナショナルズを含む10球団のトレード拒否権が付与されており、ホズマーは移籍を拒否。代わりにトレード拒否権の対象外だったレッドソックスへ放出されたという事例もある。 ●トレードされた選手の契約内容はどうなるの?
元所属球団との契約がそのまま引き継がれる。たとえば年俸1000万ドルの選手だったら、シーズン残り日数の日割り計算で算出された額を移籍先が払う(デッドライン間際で放出された場合はおよそ300万ドルになる)。同じように、今季終了後にFAとなる選手はシーズン途中に移籍してもFA権が消失することはないし、長期契約を交わしている選手もその契約がそのまま新天地でも残る。
ただし、球団間の合意により元所属球団が年俸の一定額を負担することもある。6月24日にトレードでメッツからエンジェルスに加入したエデュアルド・エスコバーの場合、メッツがメジャー最低年俸の72万ドルを差し引いたほぼ全額(約878万ドルとみられる)を負担している。
●もしトレードされた場合、選手の保有権も新天地に移るの?
シーズン終了後にFAとなる選手がトレードされた場合、「レンタル」と形容されることがある。ただ、これはわずか数ヵ月の在籍でまた別の新天地に移ることが多いため、「事実上の」という意味で使われているにすぎず、もちろん保有権も移籍先に移る。保有権が所属元に残ったまま他のクラブに移籍するサッカーの「レンタル移籍」とはシステムがまったく違う。
"人類最速男"としても有名なアロルディス・チャップマンは、16年7月末にヤンキースからカブスへ移籍して世界一に貢献し、オフにFAとなってヤンキースに復帰した。結果的には限りなくレンタル移籍に近い形となったが、FA市場で最も好条件を提示したのがヤンキースだったというだけで、最初から決まっていたわけではない。
●トレードは選手と選手の交換限定なの? 金銭トレードはできないの?
主力選手はプロスペクトと交換されることが多いが、控え選手レベルでは金銭トレードも一般的になっていて、今季は7月以降だけですでに10件以上の金銭トレードが成立している。加えて、前述のサラリー負担も金銭トレードの一種と言える。
また、ドラフト順位もトレードの材料にすることができる。22年7月にはロイヤルズがブレーブスから3人のプロスペクトを得る代わりに、ドラフト1巡目と2巡目の間に行われる全体35位の補償指名権を“放出”したことがあった。これだけでなく、海外アマチュアFA選手を獲得するための契約金(1球団で使える額が決まっている)もやり取りすることができる。
構成●SLUGGER編集部
毎年数件あれば盛んな方だと言われるNPBとは異なり、MLBはデッドライン当日にもなれば一日に数十件規模でトレードが行われる。昨年は最終日の8月2日だけで27件のトレードが成立し、計69人もの選手がチームを移った。1日の最多成立件数はウェーバー経由でのトレードが廃止された19年で、7月31日だけで30件ものトレードが成立し、計63人がチームを移った。
わずか1日でこれだけ多くのトレードが決まると、情報をフォローするだけでもかなり大変。選手はもちろん、メディア関係者にとってもトレード・デッドラインは一年で「いちばん長い日」となるのだ。
●トレードは球団間だけで決められるの? 選手の意向は反映されないの?
基本的には球団主導で動き、選手の意向は反映されない。トレードが決まって「まさか自分が放出されるとは……」と、呆然とする選手も少なくない。
ただ、中には契約に「トレード拒否権」を盛り込んでいる選手がいる。たとえば、千賀滉大が昨年12月にメッツと結んだ契約には全30球団に対するトレード拒否権が付与されており、仮にメッツが千賀を放出したいと思っても千賀本人の同意が必要となる。
実際、前述した昨年のホアン・ソトのトレードでは、パドレスからエリック・ホズマーが交換要員の一人とてナショナルズへ行くはずだった。だが、ホズマーの契約にはナショナルズを含む10球団のトレード拒否権が付与されており、ホズマーは移籍を拒否。代わりにトレード拒否権の対象外だったレッドソックスへ放出されたという事例もある。 ●トレードされた選手の契約内容はどうなるの?
元所属球団との契約がそのまま引き継がれる。たとえば年俸1000万ドルの選手だったら、シーズン残り日数の日割り計算で算出された額を移籍先が払う(デッドライン間際で放出された場合はおよそ300万ドルになる)。同じように、今季終了後にFAとなる選手はシーズン途中に移籍してもFA権が消失することはないし、長期契約を交わしている選手もその契約がそのまま新天地でも残る。
ただし、球団間の合意により元所属球団が年俸の一定額を負担することもある。6月24日にトレードでメッツからエンジェルスに加入したエデュアルド・エスコバーの場合、メッツがメジャー最低年俸の72万ドルを差し引いたほぼ全額(約878万ドルとみられる)を負担している。
●もしトレードされた場合、選手の保有権も新天地に移るの?
シーズン終了後にFAとなる選手がトレードされた場合、「レンタル」と形容されることがある。ただ、これはわずか数ヵ月の在籍でまた別の新天地に移ることが多いため、「事実上の」という意味で使われているにすぎず、もちろん保有権も移籍先に移る。保有権が所属元に残ったまま他のクラブに移籍するサッカーの「レンタル移籍」とはシステムがまったく違う。
"人類最速男"としても有名なアロルディス・チャップマンは、16年7月末にヤンキースからカブスへ移籍して世界一に貢献し、オフにFAとなってヤンキースに復帰した。結果的には限りなくレンタル移籍に近い形となったが、FA市場で最も好条件を提示したのがヤンキースだったというだけで、最初から決まっていたわけではない。
●トレードは選手と選手の交換限定なの? 金銭トレードはできないの?
主力選手はプロスペクトと交換されることが多いが、控え選手レベルでは金銭トレードも一般的になっていて、今季は7月以降だけですでに10件以上の金銭トレードが成立している。加えて、前述のサラリー負担も金銭トレードの一種と言える。
また、ドラフト順位もトレードの材料にすることができる。22年7月にはロイヤルズがブレーブスから3人のプロスペクトを得る代わりに、ドラフト1巡目と2巡目の間に行われる全体35位の補償指名権を“放出”したことがあった。これだけでなく、海外アマチュアFA選手を獲得するための契約金(1球団で使える額が決まっている)もやり取りすることができる。
構成●SLUGGER編集部
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