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高校野球

地方大会に続く「波乱」はあるか。優勝候補とダークホースの対決が続く今夏の甲子園は1回戦から目が離せない【氏原英明の2023夏の甲子園展望】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.05

 一方、意外と注目されていないが、個人レベルでは世代を代表するスラッガートリオが揃い踏みしている点は見逃せない。その年の注目選手が集結するビッグ3といえば投手であることが多いが、今大会は打者、それもホームランバッターが勢揃いしているのは楽しみだ。

 これは時代の波と言えるかもしれない。MLBやWBCを見ても分かるように、日本野球は多くの好投手を生み出してきた。さらに昨今はラプソードなどの最新機器を用いた“投手育成革命”もあって、その流れはさらに加速している。対する打者は世界水準からすると置いていかれている印象だが、ダルビッシュ有(パドレス)は「これからはバッターの時代が来る。伸びしろがあるんじゃないか」と断言している。

 その発言は村上宗隆(ヤクルト)の存在も意識してのものだが、今夏の甲子園でスラッガートリオの率いるチームがどこまで勝ち上がるかも要注目だ。チームとしての戦力も鑑みると、まずは“広陵のボンズ”真鍋慧が気になる。広陵は2回戦からの登場なので、かなり期待ができるだろう。
 
 もちろん菊池雄星(ブルージェイズ)や大谷翔平(エンジェルス)を輩出した花巻東が、高校通算140発を誇る佐々木麟太郎を擁してどこまで勝ち進むのかも期待したい。1年夏からレギュラーを獲得した佐々木は、これまでずっと注目を浴び続けてきたが、過去の甲子園出場経験は2年春のセンバツのみで、しかもこの時は力を発揮しきれなかった。チームを率いる父親の佐々木洋監督にとっても悲願となる日本一を、果たして実現することができるだろうか。

 組み合わせ的には今大会で一番最後、7日目第3試合に初めて登場する九州国際大付も、主砲の佐倉俠史朗が大きな存在感を発揮する。初戦が遅いことによる調整不足が懸念されるものの、楽しみなチームの一つ。大会記録の6本塁打更新を目標に掲げる九州No.1スラッガーの爆発を、ゆっくりと待ちたい。

 突出した「個」の存在は時にマイナスに作用する時もある。1992年夏、星稜の4番・松井秀喜が2回戦の明徳義塾戦で5打席連続敬遠されて打線が急ブレーキとなり、チームが敗れたことを想起するファンもいるだろう。突出した強打者の存在だけではなかなか勝ちきれないのはトーナメントのセオリーだが、スラッガートリオには時代の流れをひっくり返す活躍に期待したい。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

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