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プロ野球

花巻東・佐々木麟太郎はどちらを選ぶ?高卒プロ入りと大学進学、それぞれのメリットとデメリット<SLUGGER>

西尾典文

2023.09.19

 2020年のドラフトでは高橋宏斗(中日)が慶応大の入試に不合格になってプロ志望に切り替えたことが話題となったが、高橋が希望通り進学していれば今のように一軍で活躍するほどのレベルになっていることはおそらくなく、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも当然出場していなかっただろう。

 また、社会人の場合は大きな大会が一発勝負のトーナメントということもあって、粗削りで不安定なピッチャーや、長打力はあっても確実性に乏しいバッターなどいわゆる"未完の大器"タイプの選手はなかなか起用されづらいという点もある。特に高校から直接社会人に進む野手は苦しむことが多く、その点もデメリットの一つと言えそうだ。

 もう一つは怪我の問題だ。これは特に大学に多いが、4年間という期間は長く、下級生の時に活躍しても、登板過多が影響して上級生になってパフォーマンスが落ちるというのはよくあることである。そういうことからも、ピッチャーに関しては実力が十分あれば、早い段階でプロ入りした方が良いと考える指導者も確かに存在している。

 では、佐々木はどちらを選ぶ方が良いのだろうか。これは個人の問題のため、他人がどうこう言うことではないという意見も当然あるが、最終的にプロで活躍することを目指すのであれば、やはり高校からプロ入りを選択すべきだろう。
 
 まず大きいのはすでにドラフト1位クラスという高い評価を得ているという点だ。1位でプロ入りとなれば当然短期間で戦力外ということは考えづらく、入団時に得られる契約金などで備えることもできる。注目が高くなることで苦労する部分ももちろんあるが、1年生の頃から高い注目の中でプレーし続けてきたということもあって、大きな問題にはならないだろう。

 もう一つの理由は、やはり相手のレベルだ。仮に大学野球で最高峰と言える東京六大学や東都大学に進んだとしても、全員がプロのレベルの投手というわけではない。野手の場合は特に相手のレベルに対応しようとして自分のレベルも上がっていくという部分が多いため、その点でも早くからプロを相手にプレーした方が得られるものも多いはずだ。

 大学卒という学歴の問題については個人の価値観のため何とも言えないが、近年ではプロを引退してから大学で学ぶケースも増えており、後から何とでもやり直せる部分は多いはずだ。自分のモラトリアム期間として大学で何かやりたいことを探すというわけではなく、最終的に野球で勝負したいというのであれば、すでに高い評価を得ているだけに早くからプロ入りした方がメリットは大きいだろう。

 プロではそのレベルに戸惑うこともあり、注目度の高さからバッシングを浴びることも当然あるが、佐々木麟太郎のスウィングからはそんな不安を吹き飛ばすくらいの可能性が感じられる。一日でも早く、そして一日でも長く、野球ファンを熱狂させるバッティングをプロの世界で見せてくれることを願いたい。


文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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