慶応の107年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた夏の甲子園。大会期間中にドラフト候補のいる大学とプロの交流戦が多く組まれていたこともあり、日によってはスカウトの人数が少ない試合もあったが、それでも連日ネット裏には各球団の関係者がグラウンドに熱い視線を送っていた。そんな中、今大会でひときわ評価を上げたと思われる選手を5人ピックアップして紹介したいと思う。
▼森煌誠(徳島商・投手)
まず投手でナンバーワンとの呼び声が高かったのがこの森だ。徳島大会5試合を一人で投げ抜き、45回を投げて失点はわずかに3。その勢いそのままに、本大会でも優勝候補の一角に挙げられていた愛工大名電を被安打5、10奪三振、1失点と見事な投球で抑え込んで見せたのだ。試合終盤にも145キロを超えるスピードをマークし、落差のあるカーブとスプリットの精度も高い。智弁学園戦に敗れた後、社会人へ進む意向を公表したが、完成度も高いだけに早くから起用されることも十分に考えられる。U-18侍ジャパンでも投手陣の柱として期待したい。
▼黒木陽琉(神村学園・投手)
サウスポーで最も評価を上げたと言われているのが黒木だ。大会期間中の甲子園のスピードガンは左投手の時は数字が出づらかったと言われており、球場表示は140キロ台前半だったものの、プロのスカウトのガンでは最速147キロをマークしたという。高い位置からスムースに腕が振れ、落差のあるカーブと斜めに鋭く変化するスライダーも一級品。まだ細身なだけに、身体ができればスケールアップすることも期待できる。大会前には進学という噂だったが、甲子園で自信をつけたのかプロ志望届を提出すると見られており、貴重な大型サウスポーだけに3位~4位での指名も狙えるだろう。
▼新妻恭介(浜松開誠館・捕手)
春夏合わせて初出場のチームを攻守に牽引。初戦の東海大熊本星翔戦では逆転の2ランを含む2安打を放ち、守備でも盗塁を阻止するなど見事なプレーでチームの勝利に大きく貢献した。たくましい体格で「強肩強打」という言葉がピッタリ当てはまり、フットワークの良さも素晴らしいものがある。また、複数の投手の持ち味を引き出すリード面も光った。関東の強豪大学に進学と言われているが、視察したスカウト陣からは高校球界屈指の捕手と言われる鈴木叶(常葉大菊川)よりも上ではないかとの声も聞かれるほどだった。U-18侍ジャパンでもその攻守に注目だ。
▼森田大翔(履正社・三塁手)
大会前は佐々木麟太郎(花巻東・一塁手)、真鍋慧(広陵・一塁手)、佐倉侠史郎(九州国際大付・一塁手)の3人に高い注目が集まっていたが、パワーヒッターで最も目立ったのはこの森田だ。パワーはもちろんだが、それ以上に内角高めの速いボールを上手く身体を逃しながらさばいてレフトスタンドまで運べる技術の高さが光った。打者のタイプ的には同じく3年夏の甲子園でブレイクした浅村栄斗(大阪桐蔭・現楽天)と重なるものがあり、長打力と確実性を兼ね備えたバッティングは高校球界全体でも上位だ。サードの守備もミスはあったが、フットワーク、スローイングともに悪くない。佐々木、真鍋、佐倉が揃って落選となったU-18でも主砲として期待がかかる。プロ志望と言われており、希少価値の高い右の強打者タイプだけに3位くらいで指名がありそうだ。
▼横山聖哉(上田西・遊撃手)
好素材が多かったショートの中でもスケールの大きさで目立ったのが横山だ。投手としても150キロ近いスピードをマークする強肩は間違いなくプロでも上位で、たくましい体格ながら軽快なフットワーク、巧みなハンドリングも目立つ。打撃も少し力みが目立ったものの、ヘッドスピードは申し分なく、長野大会で2本塁打を放った実力の片鱗は十分に見せた。まだまだ攻守に粗さがあるのは確かだが、大学生、社会人を含めてもこれだけ大型でポテンシャルの高いショートは今年の候補の中には見当たらない。早々にプロ志望も表明。将来の正遊撃手候補が欲しい球団にとっては魅力的な人材だけに、2位以内で指名される可能性も高いだろう。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
▼森煌誠(徳島商・投手)
まず投手でナンバーワンとの呼び声が高かったのがこの森だ。徳島大会5試合を一人で投げ抜き、45回を投げて失点はわずかに3。その勢いそのままに、本大会でも優勝候補の一角に挙げられていた愛工大名電を被安打5、10奪三振、1失点と見事な投球で抑え込んで見せたのだ。試合終盤にも145キロを超えるスピードをマークし、落差のあるカーブとスプリットの精度も高い。智弁学園戦に敗れた後、社会人へ進む意向を公表したが、完成度も高いだけに早くから起用されることも十分に考えられる。U-18侍ジャパンでも投手陣の柱として期待したい。
▼黒木陽琉(神村学園・投手)
サウスポーで最も評価を上げたと言われているのが黒木だ。大会期間中の甲子園のスピードガンは左投手の時は数字が出づらかったと言われており、球場表示は140キロ台前半だったものの、プロのスカウトのガンでは最速147キロをマークしたという。高い位置からスムースに腕が振れ、落差のあるカーブと斜めに鋭く変化するスライダーも一級品。まだ細身なだけに、身体ができればスケールアップすることも期待できる。大会前には進学という噂だったが、甲子園で自信をつけたのかプロ志望届を提出すると見られており、貴重な大型サウスポーだけに3位~4位での指名も狙えるだろう。
▼新妻恭介(浜松開誠館・捕手)
春夏合わせて初出場のチームを攻守に牽引。初戦の東海大熊本星翔戦では逆転の2ランを含む2安打を放ち、守備でも盗塁を阻止するなど見事なプレーでチームの勝利に大きく貢献した。たくましい体格で「強肩強打」という言葉がピッタリ当てはまり、フットワークの良さも素晴らしいものがある。また、複数の投手の持ち味を引き出すリード面も光った。関東の強豪大学に進学と言われているが、視察したスカウト陣からは高校球界屈指の捕手と言われる鈴木叶(常葉大菊川)よりも上ではないかとの声も聞かれるほどだった。U-18侍ジャパンでもその攻守に注目だ。
▼森田大翔(履正社・三塁手)
大会前は佐々木麟太郎(花巻東・一塁手)、真鍋慧(広陵・一塁手)、佐倉侠史郎(九州国際大付・一塁手)の3人に高い注目が集まっていたが、パワーヒッターで最も目立ったのはこの森田だ。パワーはもちろんだが、それ以上に内角高めの速いボールを上手く身体を逃しながらさばいてレフトスタンドまで運べる技術の高さが光った。打者のタイプ的には同じく3年夏の甲子園でブレイクした浅村栄斗(大阪桐蔭・現楽天)と重なるものがあり、長打力と確実性を兼ね備えたバッティングは高校球界全体でも上位だ。サードの守備もミスはあったが、フットワーク、スローイングともに悪くない。佐々木、真鍋、佐倉が揃って落選となったU-18でも主砲として期待がかかる。プロ志望と言われており、希少価値の高い右の強打者タイプだけに3位くらいで指名がありそうだ。
▼横山聖哉(上田西・遊撃手)
好素材が多かったショートの中でもスケールの大きさで目立ったのが横山だ。投手としても150キロ近いスピードをマークする強肩は間違いなくプロでも上位で、たくましい体格ながら軽快なフットワーク、巧みなハンドリングも目立つ。打撃も少し力みが目立ったものの、ヘッドスピードは申し分なく、長野大会で2本塁打を放った実力の片鱗は十分に見せた。まだまだ攻守に粗さがあるのは確かだが、大学生、社会人を含めてもこれだけ大型でポテンシャルの高いショートは今年の候補の中には見当たらない。早々にプロ志望も表明。将来の正遊撃手候補が欲しい球団にとっては魅力的な人材だけに、2位以内で指名される可能性も高いだろう。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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