――日本では「もっと投げさせればいいのに」っていうニュアンスで「メジャーは100球で先発投手を代えてしまう」と言う人がいますが、それは10月のためと言っても過言じゃないくらい。
そう! 10月に無茶させるんですよね。私が本格的にMLBを見始めた19年のナショナルズも投手の起用法がすごかったです。マックス・シャーザー、スティーブン・ストラスバーグ、パトリック・コービンのスクランブル登板の連続に本当に衝撃を受けました。「こんなことするんだ」って。ストラスバーグは翌年以降、故障で残念なことになってしまいましたけど、あの起用に応えてワールドシリーズでMVPに輝きましたよね。これぞメジャーという熱さでした。後は、ドジャース時代の前田健太選手もリリーフでものすごいフル回転してましたよね。
――レギュラーシーズンでは連投が続かないようにセーブしながら回していくのが監督の仕事ですが、プレーオフに入ったら逆に「本当に信頼できる数人のピッチャーで行けるところまで行く」感じですよね。
1試合も負けられないから、残酷な起用法も込みでそういうプランを立てるんですよね。
――17年のドジャースは前田もすごかったんですけど、ブランドン・モローもすごかったんですよ。何しろ、その年のプレーオフ全15試合中14試合に登板するという(笑)。
デーブ・ロバーツ監督、何をやってるんですか(笑)。
――それで、ワールドシリーズでは最後にアストロズ打線にとんでもないホームランを打たれて撃沈するという。
そうなりますよね(笑)。
――でも、意気に感じて全力で投げる姿も、最後に燃え尽きた姿もカッコ良かったですね。
先発から中2日でリリーフとか当たり前にするじゃないですか。本当にレギュラーシーズンはそのために調整するんだなって思います。本当に、「プレーオフは何をしてもいい」くらいの感じですよね。いかに相手の勢いを止めるかがすごく重要で、強いピッチャーをとりあえずつぎ込んで、とりあえずこの中軸だけとにかく抑えてこい。いい意味で後先を考えないというか……。 ――13年にレッドソックスが優勝した時の田澤純一の使い方もまさにそうでしたよね。必ず7、8回のランナーがいる場面で、ミゲル・カブレラ(タイガース)のような強打者に当てる。
どんな展開でも、どのイニングでもとりあえずここを抑えてほしい、という感じですね。しびれますね。やっぱりそういう、勝負勘みたいな部分は大事だなと思います。プレーオフはとにかく結果がすべてだから、監督がどこでどのカードを切るかがすごく重要ですよね。
あとは先発投手の交代のタイミングも大事。20年のレイズもワールドシリーズ第6戦で、好投していたブレイク・スネルを6回途中で下ろして、結果としてリリーフが打たれて負けてしまったことがありましたよね。ケビン・キャッシュ監督はデータに基づいて交代に踏み切ったわけですけど、それでもうまくいかなかった……。データだけじゃなくて、その日の調子も大事だし、いろんなところから判断しないといけないんですよね。
――あの試合、スネルが下がった時にドジャースのムーキー・ベッツがロバーツ監督にウィンクしたらしいですね。「これで勝てる」って。
うわー! そんなことがあったんですか? やっぱり、それだけスネルが良かったってことですよね。
――本当に紙一重の運命、ドラマ。面白いですよね。
キャッシュ監督の気持ちも分かるんですよね、「やらない後悔をしたくない」というのが。正解がないですよね。本当に起用から見えるドラマは絶対にありますよね。
【後編へ続く】
PROFILE:やまもと・しゅうこ。1996年10月2日生まれ。神奈川県出身。フリーアナウンサー。2019年より『ワースポxMLB』(NHK BS)のキャスターを務める。野球好き一家に育ち、東京ヤクルトスワローズの熱心なファンとしても有名。好きな選手は宮本慎也、「土橋・宮本」の二遊間は永遠の推し。
日本人初のホームラン王となった大谷翔平の全44本のホームランを記念した永久保存版の切手コレクションが発売!
「僕個人の意見ではなく、さまざまな人の正義を描きたい」人気マンガ『ドラフトキング』の作者が語る“野球への敬意”と“今後の野望”<SLUGGER>
そう! 10月に無茶させるんですよね。私が本格的にMLBを見始めた19年のナショナルズも投手の起用法がすごかったです。マックス・シャーザー、スティーブン・ストラスバーグ、パトリック・コービンのスクランブル登板の連続に本当に衝撃を受けました。「こんなことするんだ」って。ストラスバーグは翌年以降、故障で残念なことになってしまいましたけど、あの起用に応えてワールドシリーズでMVPに輝きましたよね。これぞメジャーという熱さでした。後は、ドジャース時代の前田健太選手もリリーフでものすごいフル回転してましたよね。
――レギュラーシーズンでは連投が続かないようにセーブしながら回していくのが監督の仕事ですが、プレーオフに入ったら逆に「本当に信頼できる数人のピッチャーで行けるところまで行く」感じですよね。
1試合も負けられないから、残酷な起用法も込みでそういうプランを立てるんですよね。
――17年のドジャースは前田もすごかったんですけど、ブランドン・モローもすごかったんですよ。何しろ、その年のプレーオフ全15試合中14試合に登板するという(笑)。
デーブ・ロバーツ監督、何をやってるんですか(笑)。
――それで、ワールドシリーズでは最後にアストロズ打線にとんでもないホームランを打たれて撃沈するという。
そうなりますよね(笑)。
――でも、意気に感じて全力で投げる姿も、最後に燃え尽きた姿もカッコ良かったですね。
先発から中2日でリリーフとか当たり前にするじゃないですか。本当にレギュラーシーズンはそのために調整するんだなって思います。本当に、「プレーオフは何をしてもいい」くらいの感じですよね。いかに相手の勢いを止めるかがすごく重要で、強いピッチャーをとりあえずつぎ込んで、とりあえずこの中軸だけとにかく抑えてこい。いい意味で後先を考えないというか……。 ――13年にレッドソックスが優勝した時の田澤純一の使い方もまさにそうでしたよね。必ず7、8回のランナーがいる場面で、ミゲル・カブレラ(タイガース)のような強打者に当てる。
どんな展開でも、どのイニングでもとりあえずここを抑えてほしい、という感じですね。しびれますね。やっぱりそういう、勝負勘みたいな部分は大事だなと思います。プレーオフはとにかく結果がすべてだから、監督がどこでどのカードを切るかがすごく重要ですよね。
あとは先発投手の交代のタイミングも大事。20年のレイズもワールドシリーズ第6戦で、好投していたブレイク・スネルを6回途中で下ろして、結果としてリリーフが打たれて負けてしまったことがありましたよね。ケビン・キャッシュ監督はデータに基づいて交代に踏み切ったわけですけど、それでもうまくいかなかった……。データだけじゃなくて、その日の調子も大事だし、いろんなところから判断しないといけないんですよね。
――あの試合、スネルが下がった時にドジャースのムーキー・ベッツがロバーツ監督にウィンクしたらしいですね。「これで勝てる」って。
うわー! そんなことがあったんですか? やっぱり、それだけスネルが良かったってことですよね。
――本当に紙一重の運命、ドラマ。面白いですよね。
キャッシュ監督の気持ちも分かるんですよね、「やらない後悔をしたくない」というのが。正解がないですよね。本当に起用から見えるドラマは絶対にありますよね。
【後編へ続く】
PROFILE:やまもと・しゅうこ。1996年10月2日生まれ。神奈川県出身。フリーアナウンサー。2019年より『ワースポxMLB』(NHK BS)のキャスターを務める。野球好き一家に育ち、東京ヤクルトスワローズの熱心なファンとしても有名。好きな選手は宮本慎也、「土橋・宮本」の二遊間は永遠の推し。
日本人初のホームラン王となった大谷翔平の全44本のホームランを記念した永久保存版の切手コレクションが発売!
「僕個人の意見ではなく、さまざまな人の正義を描きたい」人気マンガ『ドラフトキング』の作者が語る“野球への敬意”と“今後の野望”<SLUGGER>
関連記事
- 大谷翔平、藤浪晋太郎、そして鈴木誠也——1994年生まれの3人は試練を乗り越え、ただひた向きに前へ前へと進み続ける<SLUGGER>
- 日本人初のホームラン王となった大谷翔平の全44本のホームランを記念した永久保存版の切手コレクションが発売!
- NYの2球団は本当に大谷争奪戦に参加するのか。大型契約を抱えるヤンキースより「戦力移行期」のメッツが不気味?<SLUGGER>
- 「ひとつはショウヘイ・オオタニの退団」エ軍ファンが今オフに直面するかもしれない「3つの最悪のシナリオ」を地元専門メディアが列挙
- 「僕個人の意見ではなく、さまざまな人の正義を描きたい」人気マンガ『ドラフトキング』の作者が語る“野球への敬意”と“今後の野望”<SLUGGER>