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大谷翔平がエンジェルスから卒業した日――古巣を“反面教師”にした末の必然のドジャース入団<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2023.12.15

「全員が勝利に対して同じ方向を向いているということが大事だと思うので。オーナーグループもそうですし、フロントの皆さんもそうですし、もちろんチームメイト、ファンの皆さんもそうですし。みんながそこに向かっているっていうのが一番大事かなと思います」

 この言葉も、僕にはエンジェルスを“反面教師”にしたものに思えてならない。

 大谷入団以前から、エンジェルスはオーナー/フロント/現場が一枚岩とは言い難い状況だった。15年には監督との衝突からGMが辞任。大谷入団後の6年間で、4人の監督と2人のGMが入れ代わった。しかも、先述したようにオーナーは大物補強には熱心だがぜいたく税を超えることを禁じ、マイナーでの育成にはまったく力を入れなかった。お世辞にも「全員が勝利へ向かって一丸になる」状況ではまったくなかったことは確かだ。

 6年間、そんな状況に翻弄されてきた人間が、過去10年続けてプレーオフに出場し、リーグ優勝3回、世界一1回を誇るチームのオーナーに「この10年間をまったく成功だとは思っていない」と言われたら、心を動かされないはずはない。

「野球選手としていつまでプレーできるかというのは正直誰も分からないですし、勝つことが僕にとって今一番大事なことかなと思います」と語る大谷にとって、ドジャースを選んだことはもはや必然だったとすら言える。
 一方、会見で「寂しさが心の中にはあるのは事実」と語っていたように、大谷がエンジェルスというチームに愛着を抱いていたことも間違いない。だが、名実ともに世界No.1プレーヤーとなった大谷の新たな夢を実現するだけの力を、エンジェルスは持ち得なかった。

 今から約2年前、僕はSLUGGERに『大谷がエンジェルスから“卒業”する日』という記事を書いた(2022年3月号)。奇しくもと言うべきか、その締めくくりはドジャース入団が決まった現在の状況にもフィットしているように思える。

「大谷が一人のプレーヤーとして次のステージに進みたいのなら、ポストシーズンという大舞台に立ち、しびれるような緊張感の中で実力を証明したいのなら、アナハイムから旅立つべきだ。(中略)エンジェルス以上に世界一に近いチームがいくつもあり、稀代の二刀流選手獲得に乗り出すだろう。大谷はその中から、チャンピオンに最も近いチームを選べばいい。それが許されるのが、フリー・エージェントという制度なのだ」

 6年かけて勝ち取った大事な権利を、大谷は熟慮と勇気を持って賢明に行使した。その決断を、僕は断固支持したい。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

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