ガーランド自身もこの契約金額には当惑していた。「代理人から数字を聞いた時は『いや、俺にはそれほどの価値はないよ』と言ったんだ。そのあと母親に『200万ドルもらうことになった』と電話したら、返事はこうだった。『おまえにそれほどの価値があるのかい?』」
本人でさえ懐疑的な好条件であっても、インディアンスにはそれを提示する理由があった。75年まで7年連続勝率5割未満と低迷していたが、76年は4位とはいえ81勝78敗と勝ち越し、さらに上を目指そうと意気込んでいたからだ。ただ、16勝でチームの勝ち頭だったパット・ドブソンは34歳、13勝のジム・ビビーも31歳。同じく13勝を挙げていた21歳のデニス・エカーズリーとともに、長く柱となれる投手を求めており、ガーランドはその条件に合致していたのだ。
インディアンスのフィル・セギーGMは「我々は最初から、故障の多いガレットよりガーランドを評価していた」と述べたが、これは不吉な予言となった。ガレットもヒジの故障で、ヤンキースでは2年しか投げられなかったのだが、その点はガーランドも大差なかった。77年は13勝こそ挙げたものの、19敗はリーグワースト。続く78年は肩を痛め6試合しか投げられず、手術に至った(執刀医はフランク・ジョーブ博士)。 復帰後も76年ほどの活躍はできないまま、81年限りで解雇された。インディアンスに在籍したのは5年、契約年数のちょうど半分で、通算28勝48敗、防御率4.50。FA史上最初の、そして最大級の失敗として、ガーランドの名前は後世に残った。
「本当に肩が痛かったのに、球団には信じてもらえなかった。『これだけの金を払っているのだから、それに見合う分だけ働け』と言われて無理して投げ、悪化してしまったんだ。俺自身も、大金にふさわしい投手だと証明したい気持ちはあって、手術からの復帰を急いでしまった」と悔やんでいたガーランド。確かに気の毒な面はあるけれども、大活躍した76年でも奪三振率4.38、K/BBは1.77で、同年は明らかに出来すぎであった。
日本で何年も好成績を残し続けた山本は、その点はガーランドとは異なるので、実力面での不安はない。とはいえ、これだけの高額契約がプレッシャーにならないわけはない。期待に応えようとして無理しすぎることなく、12年の契約期間を全うしてほしい。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
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本人でさえ懐疑的な好条件であっても、インディアンスにはそれを提示する理由があった。75年まで7年連続勝率5割未満と低迷していたが、76年は4位とはいえ81勝78敗と勝ち越し、さらに上を目指そうと意気込んでいたからだ。ただ、16勝でチームの勝ち頭だったパット・ドブソンは34歳、13勝のジム・ビビーも31歳。同じく13勝を挙げていた21歳のデニス・エカーズリーとともに、長く柱となれる投手を求めており、ガーランドはその条件に合致していたのだ。
インディアンスのフィル・セギーGMは「我々は最初から、故障の多いガレットよりガーランドを評価していた」と述べたが、これは不吉な予言となった。ガレットもヒジの故障で、ヤンキースでは2年しか投げられなかったのだが、その点はガーランドも大差なかった。77年は13勝こそ挙げたものの、19敗はリーグワースト。続く78年は肩を痛め6試合しか投げられず、手術に至った(執刀医はフランク・ジョーブ博士)。 復帰後も76年ほどの活躍はできないまま、81年限りで解雇された。インディアンスに在籍したのは5年、契約年数のちょうど半分で、通算28勝48敗、防御率4.50。FA史上最初の、そして最大級の失敗として、ガーランドの名前は後世に残った。
「本当に肩が痛かったのに、球団には信じてもらえなかった。『これだけの金を払っているのだから、それに見合う分だけ働け』と言われて無理して投げ、悪化してしまったんだ。俺自身も、大金にふさわしい投手だと証明したい気持ちはあって、手術からの復帰を急いでしまった」と悔やんでいたガーランド。確かに気の毒な面はあるけれども、大活躍した76年でも奪三振率4.38、K/BBは1.77で、同年は明らかに出来すぎであった。
日本で何年も好成績を残し続けた山本は、その点はガーランドとは異なるので、実力面での不安はない。とはいえ、これだけの高額契約がプレッシャーにならないわけはない。期待に応えようとして無理しすぎることなく、12年の契約期間を全うしてほしい。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
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