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殿堂入り投票で「人格」をどこまで重視するべきなのか――確実に変わる時代の中で曖昧な姿勢は許されなくなってきた<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.01.31

▼カルロス・ベルトラン(メッツほか)
中堅手として史上4位の通算435本塁打と1,587打点(スイッチヒッターとしては共に史上3位)、2725安打、312盗塁、通算9度のオールスター、同3度のゴールドグラブ賞選出。

▼アンドリュー・ジョーンズ(ブレーブスほか)
中堅手として史上5位の通算434本塁打、1289打点、同じく中堅手として史上3位タイのゴールドグラブ賞10度受賞、通算5度のオールスター選出。

 得票率73.8%で惜しくも殿堂入りを逃したワグナーに関しては、救援投手が元々、DHと同様に「チームの勝利に寄与する部分が他のポジションより少ない」などという偏見を持たれているので、大健闘したと思う。同氏は来年が候補者資格の最終年(有資格10年目)となるので、得票率61.6%の元楽天のジョーンズや、同57.1%のベルトランを押し退けて、来年は殿堂入りを果たすのではないかと思っている。

 一方、ロドリゲスの得票率が7.8%と昨年の10.8%を下回り、先行きが暗くなったことには、「やっぱりな」という思いがある。それは今年の投票でずっと、心の片隅に引っかかっていた候補者の「人格」と無関係ではないからだ。

 野球殿堂から毎年、配布される投票ルールには、こう記されている。

「投票は選手の成績、プレー能力、誠実さ、スポーツマンシップ、人格、そして、所属したチームへの貢献度に基づく」

 現役時代、高い三振奪取率で“K-ROD”の愛称で親しまれたロドリゲスは、キャリアの終盤に第三級暴行罪で有罪となったり、家庭内暴力で起訴されたり(後に取り下げ)と、経歴に汚点を残した選手だった。
 それが心に引っかかっていたのは、昨年12月上旬、テネシー州ナッシュビルで行われたウインター・ミーティングの際、シカゴの地元メディアのベテラン何人かと殿堂入り投票について議論する機会があったからだ。テーマは「殿堂入り投票において、「Integrity」や「Character」をどう考慮するのか?」だった。ちなみに「Integrity」は「誠実」のほかにも、「清廉」や「正直」と訳され、「Character」も「人格」以外に「品性」などとも訳される。

 それが議論になったのは、私が昨年までインディアンス(現ガーディアンズ)などで活躍したオマール・ビスケル元遊撃手に投票していたことを、彼らに明かしたからだ。K-RODと違って引退後ではあったが、ビスケルも家庭内暴力やマイナー監督時代のバットボーイへのセクハラ疑惑が問題になった時期があり、「殿堂入りする人格とは言えない」というのが地元メディアの何人かの言い分だった。

 殿堂投票のルールにある「誠実さ、スポーツマンシップ、人格」は、昨今の米国社会において、以前より遥かに重要視されるようになり、候補者の素晴らしい通算成績を簡単に駆逐するようになったと思う。事件が裁判沙汰になると、たとえ有罪とならずとも「示談に持ち込んだ=金の力で抑え込んだ」となどと断定されて、名誉の回復が難しくなっている。だから、今年の投票ではビスケルを外す決断をしたのに、“K-ROD”には引き続き投票してしまった。
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