一方、兜森崇朗監督は木製バットを使用する2人の変化についてこう語る。
「吉川と対馬の2人は前チームからの主力の立場なんですけど、力任せに強引に打ってしまっていたところがありました。彼らはしっかり技術の練習をするんですけど、うまくはできていなかった。しかし、木製バットを使うことによって力に頼らなくなりました。柔らかくタイミングをとって、ミートするところでしっかりヘッドを走らせていく。そういうのが自然と身についていったのかなと思います」
兜森監督はしっかり振れること、ボールへのコンタクト、スイング軌道をバッティングのテーマに掲げているが、それらが正しくできなくても打ててしまった旧来の金属バットでは身に付かなかった技術が選手たちに身についていると感じているようだ。
吉川はいろんな面での意識の変化を感じているという。
「体についてはとても大事にしてま す。体重とか筋肉トレーニングは気にするようになりました。特別にトレーニングを増やしたわけではないですけど、体重や筋量が体の軸を作ってくれるのかなと。木製バットになって深く考えるようになりましたし、ミートというか、しっかり芯に当てないと飛ばないので打席の中で集中するという面では集中力が上がったと思います」
今大会から導入された新基準のバットはもともと打球速度などの増加による危険性を考えてのものだが、技術力の向上に大きな寄与をしているという側面もある。「飛ばないバット」とばかり言われてしまうが、木製での対応なども含めて、新ルールは高校球児のバッティング技術が新たな局面を迎えているということも副産物としてある。
「これからチーム全員が木製バットを使用するというのは考えにくいです。2人に関しては将来的なこともありますし、やっておいた方がいいのかなと思います」
木製で打つのだという意思表示は、それは彼らの向上心そのものを表しているのかもしれない。プロを目指していく楽しみな選手が出てきた。
取材・文●氏原英明
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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「吉川と対馬の2人は前チームからの主力の立場なんですけど、力任せに強引に打ってしまっていたところがありました。彼らはしっかり技術の練習をするんですけど、うまくはできていなかった。しかし、木製バットを使うことによって力に頼らなくなりました。柔らかくタイミングをとって、ミートするところでしっかりヘッドを走らせていく。そういうのが自然と身についていったのかなと思います」
兜森監督はしっかり振れること、ボールへのコンタクト、スイング軌道をバッティングのテーマに掲げているが、それらが正しくできなくても打ててしまった旧来の金属バットでは身に付かなかった技術が選手たちに身についていると感じているようだ。
吉川はいろんな面での意識の変化を感じているという。
「体についてはとても大事にしてま す。体重とか筋肉トレーニングは気にするようになりました。特別にトレーニングを増やしたわけではないですけど、体重や筋量が体の軸を作ってくれるのかなと。木製バットになって深く考えるようになりましたし、ミートというか、しっかり芯に当てないと飛ばないので打席の中で集中するという面では集中力が上がったと思います」
今大会から導入された新基準のバットはもともと打球速度などの増加による危険性を考えてのものだが、技術力の向上に大きな寄与をしているという側面もある。「飛ばないバット」とばかり言われてしまうが、木製での対応なども含めて、新ルールは高校球児のバッティング技術が新たな局面を迎えているということも副産物としてある。
「これからチーム全員が木製バットを使用するというのは考えにくいです。2人に関しては将来的なこともありますし、やっておいた方がいいのかなと思います」
木製で打つのだという意思表示は、それは彼らの向上心そのものを表しているのかもしれない。プロを目指していく楽しみな選手が出てきた。
取材・文●氏原英明
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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