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プロ野球

源田や金子、周東らに見るスペシャリストの究極思考。「走らない」盗塁の脅威と、塁を奪うリスク

氏原英明

2019.12.30

 今季で想起するならば、8月30日の西武対ソフトバンク戦が象徴的だった。

 この試合を決めたのは、7回裏、2死一塁に源田を置いて飛び出した、3番・森友哉の起死回生の勝ち越し決勝2ランだ。今季パ・リーグMVPに輝いた森の打棒だけに注目が集まりがちだが、このホームランを生んだのは源田だった。

 実は、この試合の初回、源田は千賀滉大&甲斐拓也のバッテリーから盗塁を決めている。プロ入り100盗塁目の節目のものだった。

 これが伏線になっていた。

 話を7回に戻すが、源田は1回とは違って、この時、盗塁をするつもりはなかった。源田が常日頃言っているのは、「がむしゃらになんでも走るものではなく、考えて盗塁をする。一塁にいて、ストレートを投げさせたほうがいい時もある」というものだ。

 つまり、この時は、一塁に止まることで、ストレートを投げさせることを狙った。

 源田は言う。

「もちろん、向こうがどう思っているかは僕には分からないです。ストレートを投げてくれたらなとは思っていますけど、どうして投げたかまでは分かりませんから。ただ、場面的に、僅差の試合展開で、終盤に入って盗塁がアウトになったら、流れは相手に行きますから、慎重な気持ちでいました」

 盗塁リスクを避け、ストレート投げてくれることを願い、源田は一塁にとどまった。その末の森の打棒だった。
 
 一方、「プレミア12」では、逆のパターンで注目を浴びたのが周東だった。周東はこのシリーズで盗塁をたびたび成功させたのだが、一方で、次打者が5度にわたって三振を喫するということが起きた。

 周東が一塁走者にいるからと、打者が盗塁を待ってしまうことが頻発して、そうした結果を招いたのが一因だった。もちろん、これは周東だけが悪いわけではなく、代表チームという戦術が徹底できない中で招いてしまったものだった。

 周東の足に期待するがあまり鈴木誠也(広島)、浅村栄斗(楽天)、山田らはボールを見てしまった。積極性を欠いたことで、カウントを悪くしてしまっていたのだ。

 外崎が大会中、こんな話をしていた。

「盗塁に関しては早いカウントでいくことは心がけていますね。そうするほうがバッターも助かるだろうし。クイックが速い投手もいますけど、その準備はしています」

 1番の理想は初球から決めることができる盗塁だろう。しかし、クイックが早い投手もいれば、“甲斐キャノン”のような途轍もないスローイングができる捕手もいる。一筋縄ではいかない。

 だからこそ、盗塁は奥深く考える必要がある。早いカウントで決めること、打者を生かすために自重すること、バッテリーに配球を偏らせること……。

 盗塁一つとっても、野球の奥深さたるや計り知れない。多角的に見ていくことで、野球を見る面白さは倍増すると、改めて考えさせられている。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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