ただ、保身といっても今と昔では文脈が違います。セイバーメトリクスが普及する前は、まだファンにも解説者にも「バントは有効な戦術だ」という根拠のない認識が広がっていた。だから、バントが必要とされる場面でそれ以外の戦法を取ってしまうと、ファンや解説者の反発が大きかったというのはあると思います。ファンが納得しないから、というのは興行であるプロ野球においては存外に大きなファクターになるんですよ。
実際にこれはV9巨人の参謀だった牧野茂さんが話していたんですが、当時すでに王貞治を2番に置くプランを考えたことがあったそうです。今で言う「2番最強打者説」ですね。というのも、1番・柴田勲が出塁して、2番の土井正三が送りバントをすると、3番の王は敬遠されてしまう。もちろん後ろに長嶋茂雄が控えているけど、それでも打つ確率は3割ほど(編集部注:王敬遠後の長嶋の通算打率は.277)。だったら、王を2番に置いた方がいいんじゃないか、という話が出たそうなんです。実際にオープン戦で確か2回試して、牧野さんと川上哲治監督は「これはいいんじゃないか」という話になったそうです。
「じゃあ、何で使わなかったんですか?」と聞いたら、牧野さんは「いや、周囲が納得しないからだ」と言ってました。当時、バントを支持していた世論もそれと同じで、確率の高い/低いをきちんと考えないで、間違った先入観でしかない考え方がセオリーのようにされて全部正しいという論調で話されてしまう。今も野球中継を見ていて、解説者やアナウンサーが「ここはバントですね」という話し方をしているのと同じです。
でも現在は、少なくともファンのレベルでは「バントが有効ではない」という概念はかなり一般的になってきました。少なくともバントをしないことに対してファンの反発は少ないと思うんだけど、それでもプロ野球の監督がバントのサインを出し続けるのは「昔から正しいと言われている戦術をきちんとやってますよ」という意味での保身ですね。
でも、考えてみればこれはおかしな話なんです。昔ながらの戦法が必ずしも正しいとは限らないというのは、MLBを見ても明らかですよね。たとえば2002~03年のアスレティックスは、これまで軽視されていた出塁率を重視する“マネーボール戦法”で、低予算ながらも地区優勝を成し遂げた。今ではそれが球界の常識にまでなっている。何でああいうチームがアメリカでは出てきて、日本では出ないのか? それはNPB各球団の内部に、そして球界全体に、強くなるためのノウハウがほとんど蓄積されていないということが大きいんじゃないかと思います。
実際にこれはV9巨人の参謀だった牧野茂さんが話していたんですが、当時すでに王貞治を2番に置くプランを考えたことがあったそうです。今で言う「2番最強打者説」ですね。というのも、1番・柴田勲が出塁して、2番の土井正三が送りバントをすると、3番の王は敬遠されてしまう。もちろん後ろに長嶋茂雄が控えているけど、それでも打つ確率は3割ほど(編集部注:王敬遠後の長嶋の通算打率は.277)。だったら、王を2番に置いた方がいいんじゃないか、という話が出たそうなんです。実際にオープン戦で確か2回試して、牧野さんと川上哲治監督は「これはいいんじゃないか」という話になったそうです。
「じゃあ、何で使わなかったんですか?」と聞いたら、牧野さんは「いや、周囲が納得しないからだ」と言ってました。当時、バントを支持していた世論もそれと同じで、確率の高い/低いをきちんと考えないで、間違った先入観でしかない考え方がセオリーのようにされて全部正しいという論調で話されてしまう。今も野球中継を見ていて、解説者やアナウンサーが「ここはバントですね」という話し方をしているのと同じです。
でも現在は、少なくともファンのレベルでは「バントが有効ではない」という概念はかなり一般的になってきました。少なくともバントをしないことに対してファンの反発は少ないと思うんだけど、それでもプロ野球の監督がバントのサインを出し続けるのは「昔から正しいと言われている戦術をきちんとやってますよ」という意味での保身ですね。
でも、考えてみればこれはおかしな話なんです。昔ながらの戦法が必ずしも正しいとは限らないというのは、MLBを見ても明らかですよね。たとえば2002~03年のアスレティックスは、これまで軽視されていた出塁率を重視する“マネーボール戦法”で、低予算ながらも地区優勝を成し遂げた。今ではそれが球界の常識にまでなっている。何でああいうチームがアメリカでは出てきて、日本では出ないのか? それはNPB各球団の内部に、そして球界全体に、強くなるためのノウハウがほとんど蓄積されていないということが大きいんじゃないかと思います。
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