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高校野球

馬淵監督の「バントができる選手」中心の構成に疑問噴出のU-18侍ジャパン。だが、本質的な問題はもっと深いところにある<SLUGGER>

西尾典文

2023.08.30

WBC優勝を果たしたトップチームとは真逆のスタイルを掲げる馬淵監督。だが、U-18代表を取り巻く問題は別のところにある。写真:THE DIGEST写真部

WBC優勝を果たしたトップチームとは真逆のスタイルを掲げる馬淵監督。だが、U-18代表を取り巻く問題は別のところにある。写真:THE DIGEST写真部

 8月22日に発表されたU-18侍ジャパン。28日には大学日本代表との壮行試合が行われたが、結果は0対8と完敗。特に打線はシングルヒット3本に抑え込まれ、大学日本代表の投手陣のレベルが高かったとはいえ、攻撃面には多くの課題が残った。

 チームを指揮する馬淵史郎監督はメンバーについて「バントができる選手を選んだ」とコメントしているが、3本のヒットのうち2本はツーアウトからであり、送りバントの機会すらなかったと言える。また下級生の頃から注目を集めていた佐々木麟太郎(花巻東)、真鍋慧(広陵)、佐倉侠史郎(九州国際大付)の強打者3人が揃って選出されず、"脱スモールベースボール"で3月のワールドベースボールクラシック(WBC)を優勝したトップチームとの比較もあって、メンバー選考への疑問の声も多い。

 しかし、仮にU-18W杯でスモールベースボールを目指して結果が出なかったとしても、その全責任を馬淵監督など首脳陣に求めるというのは少し違うのではないだろうか。馬淵監督は長年指導してきた明徳義塾で手堅い守備とバントや機動力を駆使した攻撃で結果を残してきており、そういった指導者に監督を任せるのであれば、当然代表チームでも同様の戦い方を目指すのは当然である。普段は金属バットで公式戦を戦っている選手が国際大会では木製バットになることで苦しむケースが多いことを考えても、小技に振り切るというチーム方針は目に見えていたことなのだ。
 そしてメンバー選考以上に気になるのが、日本全体で国際大会に勝つためにどういう野球を目指してどんな選手を育てるかというビジョンや組織がないことである。2012年に野球日本代表チームが『侍ジャパン』という名称となり、各年代の代表もその冠をつけることになったが、統一されたのは名称だけで強化の方針というものは示されていない。

 侍ジャパンのあらゆる事業を手掛ける株式会社NPBエンタープライズの事業内容を見ても、その目的は興行、イベントやプロモーションの企画などであり、日本の野球全体を強化するということは含まれていない。侍ジャパンのオフィシャルサイトには『育成・強化』というメニューがあるが、最後に更新されたのは2018年となっている。名称を統一して興行を企画、実行はしても、強化に関しては各団体、チームに委ねているというのが現状なのだ。幸いなことにトップチームは常に国際大会で上位に進出しているが、今後もこれが続く保証はない。野球界発展のために裾野を広げるとともに、世界の中でも結果を残すことは重要であり、そのためにも日本の野球としての強化方針をまとめることが必要だろう。

 もう一つ気になるのが高校生年代の代表チームの位置付けだ。大会に出れば優勝を目指すのはもちろんではあるが、サッカーの例を見ても分かるように最終的に求められるのはトップチームの成績であり、年代を考えても育成に重きを置く必要があるはずだ。
 

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