事実、指揮官も牧には厚い信頼を寄せるコメントを大会期間中に残している。井端弘和監督は今大会3番に辰己涼介、4番は森下翔太、5番を栗原陵矢でクリーンアップを形成。当初は4番候補と言われていた牧を開幕戦のオーストラリア戦から「6番」に起用した。この意図について同監督は「牧選手は本来、4番を打てると思っている打者ですけど、走者を置いた場面、より多くチャンスで回ってくるところでいってもらっている」と説明した。
すると、指揮官の狙い通りにDeNAの主砲は初戦の7回1死三塁の場面で中前にタイムリーヒットを放ち、いきなり期待に応えた。続く2戦目の韓国戦では1点ビハインドの5回2死満塁から逆転となる中前適時打で勢いをつけると、17日のキューバ戦でも5回に4点目となる右前適時打を叩き勝負強さを遺憾なく発揮。侍打線の重要なポイントゲッターとなった。
極めつけはスーパーラウンドの第2戦・ベネズエラ戦(22日)だ。日本は6回表に相手の2ランで1点を勝ち越された直後、下位打線がつながり5対5の同点に追い付いた。なおも2死満塁の絶好機で牧に打順が回ってくると、2球目のスライダーを一閃。左翼スタンド中段にぶち込む満塁ホームランでチームを逆転勝利に導いた。
グラウンド内外でも若手に積極的に声をかけ、チームの雰囲気を盛り立てる牧の姿にクレア氏は「正直なところ、私はこの大会でマキに少し興味を持っているんだ。なぜなら彼は、昨年のWBCから選手として本当に成長している。今年は守備が向上し、盗塁もできるようになった(プロ入り後、初の二桁に到達)。 私が彼の大ファンだからそうなってほしいだけかもしれないけど、もしこのまま彼が成長し続ければ、どのレベルまでいくのか本当に楽しみだよ」と興奮気味に語った。
決勝は台湾に4安打完封負けを喫し、銀メダルとなった侍ジャパン。あと一歩で連覇を逃し、肩を落としてベンチに戻ってきた森下を牧は労うように肩をポンと叩いた。そのあと、チームリーダーは毅然とした態度で台湾の戴冠をベンチ前でじっと見つめていた。「最後の最後に向こうの先発や中継ぎピッチャーが自分たちの野球をさせてくれなかった。要所要所をしっかり抑えてくるということをされてしまったので、打ち崩すことができなかった」と振り返り、アジアの新たなライバルを称えた。
取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)
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