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MLB

韓国、台湾も巻き込んでMLBに対抗できるリーグを――「日本球界のマイナーリーグ化」を食い止めるための改革案<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.12.26

 残された社員が考えるべきことは、「どうしてウチの会社は優秀な社員を海外の同業者に引き抜かれてしまうのだろう?」である。NPBの平均観客動員数はMLBと同規模(約3万人)で、むしろNPBの方が客が入っているというのが真実なら、「どうして、総収入はMLBの約1.5兆円に対して、NPBが2000億円以下なんだろう?」と考えて然るべきではないか。

 すでに多くの著名人が指摘しているように、両国間のテレビ(ストリーミング・サービス)放映権や、高額チケット=VIPルームの数、売店収益の分配率など球場における収益の大きな違いなど、格差が生まれる土壌は明確化している。水面下で改革が進んでいるのなら、一刻も早く結果を出すべきで、まったく進んでないのなら今すぐ何か手を打つべきだろう。

 インターナショナルな大企業=MLBと、ドメスティックな中小企業=NPB。日本のプロ選手たちはそんな日米格差によって、将来を大きく左右される運命にある。

 NPBの契約更新ニュースから推定すると、来季のNPB最高年俸はロベルト・オスナ投手(ソフトバンク)の10億円である。2位が坂本勇人内野手(巨人)と村上宗隆(ヤクルト)の6億円で、以下、柳田悠岐外野手(ソフトバンク)の5億7000万円や、近藤健介外野手(ソフトバンク)の5億5000万円……と続く。

 一方、MLBの年俸ランキング(その多くが可変式なので年平均)は、1位が大谷翔平(ドジャース)の7000万ドル(107億9,085万円)、2位が冒頭に挙げたソト(メッツ)の5100万ドル(78億5979万円)となっており、以下、ザック・ウィーラー(フィリーズ)の4200万ドル(64億7050万円)、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)の4000万ドル(61億1145万円)……と文字通り桁外れの金額が並ぶ。
 MLBの大谷やソト、NPBのオスナはそれぞれのリーグの「別格」と考えられるが、彼らより(平均)年俸が少ない選手たちでも日米格差は10:1前後もある。それに、NPB最高年俸のオスナでも、MLBでは196位のアーロン・バマー(ブレーブス)、ハンター・レンフロー(ロイヤルズ) 、マウリシオ・デュボン(アストロズ)と同等だし、来オフのMLB移籍を狙う村上は、同259位のカッター・クロフォードの385万ドルや、同260位のタナー・ハウク(ともにレッドソックス)の375万ドルを少し上回る程度だ。

 ちなみにバマーはメジャー8年間で通算5セーブの中継ぎ左腕、レンフローは9年間で通算192本塁打のベテラン外野手、デュボンは内外野を兼任できる貴重な万能選手で、決してスター選手ではない。

 クロフォードやハウクは、今後も怪我なく先発ローテーションを守り続けることができれば、FA権取得後は村上はもちろん、オスナも楽勝で抜く高額契約を結ぶことになる。それがMLBの年俸上昇のパターンであり、結果的にNPBで成功した選手たちが、若くしてMLBに移籍したいと思う要因の一つとなっている。

 もしも、NPBがMLBに匹敵するようなリーグだったら、「トップクラスのクローザー」であるオスナは、23年オフにソフトバンクから自由契約になった際、4年総額40億円超の契約ではなく、エドウィン・ディアズ(メッツ)やジョッシュ・ヘイダー(パドレス)のように、年俸1900万ドル(29億円)超の大型長期契約を結んでいただろう。

 もしも、NPBがMLBに匹敵するようなリーグだったら、「NPB屈指の若手スラッガー」である村上は22年のオフに3年総額18億円ではなく、同年夏、同じ三塁手のオースティン・ライリー(ブレーブス)が結んだ球団史上最高総額の10年2億1200万ドル(約32億6480万円)規模の大型契約で残留に合意し、ヤクルトは未来のFA流出を阻止できたかもしれない。
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