専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

あのジーターやグリフィーでさえ叶わず...満票での殿堂入りが取り沙汰されること自体がイチローの偉大さの証<SLUGGER>

出野哲也

2025.01.21

 イチローに票を入れなかった場合も、その理由は当然説明されなければなるまい。『ジ・アスレティック』のジェイソン・スタークは「日米合計で4367安打、アメリカだけでも3089本(すべて27歳以降で)」「10年連続で200安打&ゴールドグラブ受賞。5年連続でさえ他にはいない」といった業績を連ねて「彼に投票しない理由をどうしたら説明できるというのだ?」と疑問を投げかけた。

 けれども、イチローは完全無欠の候補というわけでもなかった。ワールドシリーズに一度も出られなかったのは彼のせいではないけれども、それを理由に投票しない者がいても不思議ではない。また、出塁率でリーグ8位以内に入ったのは04年(2位)の一度だけ。本塁打は05年の15本が最多で、近年は殿堂入り投票の際に重視されるようになっているWAR(どれだけ勝利に貢献したかを示す指標。Baseball Reference版)も通算60.0で史上194位に過ぎない。
 

 こうした要素を重要視する投票者の目には、イチローはそこまで魅力的な候補とは映るまい。グリフィーJr.やジーターを差し置いて満票とするわけにはいかない、と考える者もいるかもしれない。現役時代に記者と友好的な関係とは言えなかったことも、マイナス材料になりかねない。もしイチローが満票でなかったら、このような理由に基づいたものであったのだろう。

 とはいえ、たとえ満票でなくとも、殿堂入りの価値はいささかも減じたりはしない。前述の通り得票率100%は、MLBで伝説的な地位を築いた選手たちですら不可能で、リベラの例は奇跡のようなものだった。資格1年目での殿堂入りが確実視され、「満票かどうか」が注目されている時点で、すでにイチローの偉大さは証明されていると言っていいだろう。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。

【動画】日本人初の殿堂入りはもはや確実。イチローがMLBで残した偉大な足跡を振り返る
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号