☆最大のセールスポイントの打力

　高校時代に高校通算38本塁打、４度経験した甲子園で５ホームランを放ち、さらに史上10人目の２打席連続アーチと見る者を圧倒した打力は、プロに入ってますます磨きがかかっている。

　強力なベイスターズ打線も封じ込まれていたホークスの投手陣にも力負けは皆無。剛腕セットアッパーの松本裕樹からタイムリーを放った場面には「勝つために、勝利に貢献するという強い気持ちで打席に入りました」と告白。追い込まれたあとでも「向こうよりも強い気持ちを持つだけでした。気持ちを入れていたので、しぶといヒットになったと思います」と何はなくとも気合と集中力で挑んだ結果だと胸を張った。対戦の圧倒的に少ない相手との勝負にも「変わらずいつも通りです」とサラリと言ってのける姿には、そこはかとないセンスを感じさせずにはいられない。
  　４番の牧秀悟も、この日はすぐ後ろの５番に入っていた松尾に「やっぱりヒットも打ちますし、いいところでも打てるという勝負強さもあるので、回せばなんとかしてくれると思えますね」と信頼感を口にする。自身も大卒の即戦力として機能していたが、高卒３年目で早くも頭角を表わしてきた20歳に「変則のピッチャーでも、球の速いピッチャーでも自分のバッティングができますよね。どのピッチャーに対しても自分のスイングができるんです」と舌を巻き、「汐恩の良さはなかなか真似できないところがありますね。そこは凄いなと思いますよ」とルーキーから数々の記録を塗り替えたキャプテンからみても、只者ではない何かを感じ取っているようだ。

　三浦監督もバッティングに関して「自分の間合い、リズムで打席に入れていますよね。スタメンマスクを被るときもあれば、DHで出ることもあるのですけれども、変わらずにやってくれていますね」と、どんな状況でも不動心でプレーできている度胸に最敬礼。加えて「リードに関しても、キャッチングでもブロッキングでも、毎日相川コーチと取り組みながら成長してくれてますね」と高校から捕手へと転身した経歴も加味し、日々加速度的に伸びていくディフェンス面にも目を見張るモノがあると目を細めた。

　弱冠20歳ながら異次元の輝きを魅せる松尾汐恩。プロスペクトからモンスターへと変貌する未来は、そう遠いことではなさそうだ。

取材・文●萩原孝弘

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