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高校野球

【氏原英明が選ぶセンバツ名勝負5選:前編】滋賀の無名公立校が“ジャイアントキリング”をやってのけた第80回記念大会

氏原英明

2020.04.03

 立ち上がりが良かったのは若竹の方だった。140キロ代中盤のストレートでぐいぐい押しながら、大会出場校中、打率トップの東邦打線を寄せ付けなかった。一方の木下は変化球を駆使した慎重な立ち上がりだった。5回まで0-0で推移すると、2人の投げ合いは熾烈さを増した。

 両者ともにピンチは招くものの、そこから崩れない。まさに「エース対決」だった。

 試合の決着は10回裏、2死から四球で出た走者を一塁において、水野祐希(元ヤクルト)が右中間へ適時三塁打を放ち、試合は決した。若竹、木下ともプロでは目立った活躍を見せることがなかったため、この投げ合いがクローズアップされることは少ない。

 それでも、高校野球の中では貴重な「珠玉の投手戦」と呼べる、いつまでも見ていたいと思えた名勝負だった。
 
●第80回記念大会(2008年)2回戦 北大津(滋賀)6―2横浜(神奈川)

 普通の意味での「名勝負」とは少し毛色の違う試合だ。

 滋賀の無名の公立校が甲子園常連校で2年前の覇者でもある横浜に立ち向かった試合だ。両校のメンバーを並べてみても、その後の違いに愕然とする。それほどの開きがあった

 北大津は4番・石川駿(現中日)がその後も活躍したが、横浜はエースの土屋健二(元日本ハム)をはじめ、倉本寿彦(現DeNA)、筒香嘉智(現タンパベイ・レイズ)がいた。
 
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