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MLB

35歳で夭折した"黒いルース"――ジョシュ・ギブソンの悲劇【ダークサイドMLB】

出野哲也

2020.04.15

 47年1月20日にギブソンは亡くなった。劇場で倒れて病院に運び込まれ、脳出血が死因だったとも、実家で家族と過ごしている最中に心臓発作で急死したとも言われている。史上最高の打者の一人であるにもかかわらず、死の様子すら定かに伝わってはいないのだ。ドジャースがロビンソンと契約してから、1年3か月後の出来事だった。

 ニグロリーグの試合は公式記録が残されていないため、ギブソンが実際にどれだけの成績を残したかは正確には分かっていない。野球殿堂の調査によって判明した範囲では、ニグロリーグでの通算1825打数で打率.350、107本塁打、351打点となっている。リーグ戦以外の試合は草野球レベルの対戦相手も珍しくなく、海外での試合を含めても本当にホームランを800本も打っていたかどうかは疑問がある。おそらくは、714本塁打のルース以上の打者だったのを強調するための数字であったのだろう。もっとも、実際の本数に大した意味はない。誰の目にもギブソンが素晴らしい打者であった事実は変わらないからだ。
 
 19世紀のメジャーリーグでは、わずかながら黒人選手が在籍した例はあった。通説で最初の黒人メジャーリーガーとされるウォーカー兄弟の他にも、1879年に1試合だけ出場したビル・ホワイトが黒人だったとの説も最近では有力になっている。
 
 20世紀以降、各球団による"紳士協定"で黒人選手はメジャーだけでなく、傘下のマイナーリーグからも完全に排除された。しかし、メジャーで十分に通用する実力者が何人もいるのは広く知れ渡っていた。かつてはオフシーズンになると、メジャーの選手たちが自主的にチームを組んで各地を巡業し、そこでニグロリーグのチームと試合を行うことも珍しくなかったので、その実力を肌で感じ取っていたのだ。
 

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