一方、大阪桐蔭の西谷監督は薄氷の勝利に安堵した様子だった。
「大阪の独自大会、最後の試合で履正社に大敗しました。選手たちは自信をなくすということはなかったんですが、思うように行かない試合だった。1週間でどれだけ最後の試合に気持ちを持っていくか。負けて終わるのか、勝って終わるのか。勝ち負けに限らずどういう試合をするのか、今の自分がどれだけやれるかを信じて戦いました」
8回裏の1死二、三塁のチャンスで、西谷監督はスクイズのサインを出した。今大会の趣旨を踏まえれば、そこまで勝利にこだわる必要はないようにも思えるが、昨年、甲子園の出場を逃し、さらに今年の大阪独自大会では履正社に大敗。このまま終われない意地があった。スクイズは成功しなかったが、キャプテンの一打はその意地から生まれたものだった。
西谷監督は言う。
「負けて甲子園に来るという経験は初めてでしたので、今までとは違った気持ちでした。相手が東海大相模さんなので、そう簡単には行かないですが、勝つことと粘り抜くことをやりたいと思った。うちとしては、一番やりやたかったゲームができました」
門馬監督も、この試合の意義を噛み締めた。
「僕たちがこの試合で大事にしたのは、甲子園という場所と大阪桐蔭という相手です。ここから何を得るか、何を感じるか。これがすべてだと思っています。最後の夏であるとか、苦しい思いをした3年生への思いとかいろいろあるんですけど、甲子園に変わるものはないと改めて思いました。みんなが目指したところで野球をやらせてもらえる。俺たちの目指している場所って、こんな空気があるところだと感じることができました」
高校球界一線級の選手たちが見せた戦い。
勝っても優勝ではない。負けても敗退ではない。そんな空気の中で、両校は熱戦を通じて「甲子園」への思いを表現した。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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「大阪の独自大会、最後の試合で履正社に大敗しました。選手たちは自信をなくすということはなかったんですが、思うように行かない試合だった。1週間でどれだけ最後の試合に気持ちを持っていくか。負けて終わるのか、勝って終わるのか。勝ち負けに限らずどういう試合をするのか、今の自分がどれだけやれるかを信じて戦いました」
8回裏の1死二、三塁のチャンスで、西谷監督はスクイズのサインを出した。今大会の趣旨を踏まえれば、そこまで勝利にこだわる必要はないようにも思えるが、昨年、甲子園の出場を逃し、さらに今年の大阪独自大会では履正社に大敗。このまま終われない意地があった。スクイズは成功しなかったが、キャプテンの一打はその意地から生まれたものだった。
西谷監督は言う。
「負けて甲子園に来るという経験は初めてでしたので、今までとは違った気持ちでした。相手が東海大相模さんなので、そう簡単には行かないですが、勝つことと粘り抜くことをやりたいと思った。うちとしては、一番やりやたかったゲームができました」
門馬監督も、この試合の意義を噛み締めた。
「僕たちがこの試合で大事にしたのは、甲子園という場所と大阪桐蔭という相手です。ここから何を得るか、何を感じるか。これがすべてだと思っています。最後の夏であるとか、苦しい思いをした3年生への思いとかいろいろあるんですけど、甲子園に変わるものはないと改めて思いました。みんなが目指したところで野球をやらせてもらえる。俺たちの目指している場所って、こんな空気があるところだと感じることができました」
高校球界一線級の選手たちが見せた戦い。
勝っても優勝ではない。負けても敗退ではない。そんな空気の中で、両校は熱戦を通じて「甲子園」への思いを表現した。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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