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プロ野球

田中、菅野、千賀の動向から見る“移籍制度の歪み”。「FA、ポスティング」の問題点とは?〈SLUGGER〉

中島大輔

2021.02.03

 導入から20年以上が経ち、ポスティングのルールも変更されるなか、本来の趣旨と異なる形で使われる場合も出てきた。賛否両論を呼んだ菅野のケースはまさにそう言える。

「判断するのは僕であって、僕の人生なので」

 菅野はそう反論したが、もしFA権を行使した上で同様の選択をしたなら、他者に異論を挟む余地はない。ただし今回はポスティングをお願いしている立場で、制度の趣旨に反しているように感じられる。

 さらに危惧されるのが、後輩たちへの影響だ。巨人は長らくポスティングを認めてこなかったが、昨オフに山口俊(現ブルージェイズ)、今オフは菅野を入札にかけた。ただし、山口はDeNAからFA宣言した際に獲得、菅野は日本ハムのドラフト指名を拒否して1年浪人後に入団したという経緯があり、両者のポスティングはあくまで“特例”かもしれない。

 巨人が菅野をポスティングにかけたことでMLBとの獲得競争になり、今季年俸は通常の査定にプラスアルファが加えられたことも考えられる。現状、ポスティングはあくまで球団の権利であり、日米を“天秤”にかけるようなケースが続けば、入札にかけることを拒否する球団も出るかもしれない。

 もっとも、心理的には菅野の決断は理解でき、ポスティングという制度自体に問題がある。選手の意思が反映されにくい点だ。
 
 そこで改善案として、例えば登録日数が5年に達したら選手はポスティングにかけられる権利を取得できるようにする。ソフトバンクは同制度の行使を認めていないが、ドラフトで入団先を選べない選手たちにとって、球団ごとに状況が異なるという“不公平”を解消できる。

 あるいはポスティングの撤廃、そしてFA権の取得期間短縮だ。ソフトバンクの三笠武彦GMは2018年末、西日本スポーツの記事「ソフトB千賀がポスティングでの米移籍にこだわる理由と、球団が容認しない理由」でこう話している。

「12球団のいろんな方針がある中で『海外に早く挑戦させるべきだ』と野球界としてコンセンサスが取れるなら、選手会と話し合って、海外FA権の(取得に必要な)期間を短くするとかいうような議論があってしかるべきだし、そうなればなったで球団の経営を圧迫する要因にもなる」

 コロナ前の発言だが、「世界一」を掲げるソフトバンク首脳は議論の余地を認めている。追随する楽天や巨人、他球団はどう考えているだろうか。

 今オフ、田中、菅野、千賀という日本を代表する3投手の動向を見ていると、20年以上前に設計された移籍制度は「時代遅れ」にしか映らなかった。

文●中島大輔

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