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MLB

大谷よりむしろトラウトをトレードに出すべき? 過去のスーパースター放出例から考える「エンジェルスの今後」<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.07.27

 レンジャーズが今のエンジェルスと違うのは、「このままでは優勝できない」と早々に決断したことだ。A-RODが2度目のMVPを獲得した03年のオフ、レンジャーズはまずレッドソックスと交渉したが、それが破談。ヤンキースへのトレードを敢行するに至った。

 レッドソックスはマニー・ラミレス外野手と当時19歳の若手左腕ジョン・レスター投手、ヤンキースはアルフォンソ・ソリアーノ内野手とマイナー選手を交換要員として差し出しているが、レッドソックスはA-RODの残り契約の減額、ヤンキースはA-RODの残り契約=1億7900万ドルのうち6700万ドルをレンジャーズが支払うことが重要な付随条件として求めた。「金満球団」にとっても、長期の高額契約は「チームの補強を滞らせる」というマイナス面があったということだ。

 A-RODを放出する英断を下したレンジャーズは、04年から3年連続で地区3位、08年から2年連続2位と段階的に競争力を上げると、10年には地区優勝から球団史上初のリーグ優勝を成し遂げ、翌年もリーグ連覇を果たした。一方、当時ア・リーグ東地区で6連覇中だったヤンキースは、A-ROD加入後に連続地区優勝を3年伸ばして9連覇を達成したものの、リーグ優勝は09年、世界一は松井秀喜がワールドシリーズMVPに輝くまで達成できなかった。

 つまり、A-RODという名の「重荷」を捨てたレンジャーズはリーグ優勝までに10年、代わりにその「重荷」を背負ったヤンキースは、リーグ優勝までに6年かかっているわけだ。
 
 誤解を恐れずに書いてしまうと、トラウトはその「重荷」であり、今オフに大谷が年俸3000万ドル級の契約を交わしたなら、彼もまた、エンジェルスにとって「重荷」になる。だから、エンジェルスにトラウト大谷の2件の超高額契約を抱える覚悟がないのなら、どちらかを放出するしかない。

 イチローがいた当時のマリナーズは、(地区優勝した移籍初年以外)ペナントレースそっちのけで個人記録ばかりが話題になった。それは必ずしも悪いことではないのだが、野球選手の究極の目的は、「ゲームに勝つこと」であるべきだし、今のエンジェルスのように毎夏、優勝争いから自動的に脱落するのは、選手にとってはとても不幸な時間だ。

 かつて大谷自身が言ったような「もっともっと楽しい、ヒリヒリするような9月」は今年も訪れなかった。エンジェルスは今こそ、その現実を直視して、具体的な行動を取るべきではないか――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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