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MLB

「同じような数字なんで面白くない」――慌てず、騒がず、虎視眈々と渡米4年目の“勝負”に挑む鈴木誠也<SLUGGER>

ナガオ勝司

2025.03.10

 彼が現実的に中堅で出場する可能性は低いが、大事なのはオープン戦の試合後、彼が中堅守備について、「楽しかった」と言えたことだろう。

「ボールも見やすいですし、凄く守りやすかったですけど、10年ぶりぐらいなんで疲れました。まあでも、やっとけば、シーズンで突然、(中堅に)入ったとしても気持ちは楽なんで、普通に楽しかったです、今日は」

 彼はその2日後、今度は左翼で出場し、フェンス際の大飛球をジャンプして好捕した。それは遠征先での出来事で、取材が終わっての帰り際、普段着の彼はなぜか、グラブだけを手にしながら「お疲れ様でしたーっ」と元気よく帰っていった。

 ふと気になって、彼が去っていった方向を見た。コンクリートに囲まれた敵地球場の長いスロープを歩きながら、突然、彼がその試合でやってみせたように、コンクリートの壁をフェンスに見立てて、ジャンプして捕球するような仕草を何度も繰り返した。 

 まるで野球少年だな、と思うと同時に、いつだったか、彼が「指名打者」ではなく、本来のポジションである「右翼」で出場した時に言ったことを思い出した。

「野球やってるって感じがする」。

 指名打者に甘んじるつもりはない。2年連続の打率2割8分、20本塁打以上という数字に満足する気も、まったくない。今の彼に、「さらなる飛躍を目指す」などという常套句は似合わない。一見、穏やかに思える時間を過ごしながらも、「勝負している」感じがするのは、彼が「メジャーでのここまで」を厳しい視線で捉え、まるで「逆襲」や「反撃」に近い感覚を持っているからかもしれない。
 鈴木は3月8日のマリナーズ戦の第4打席、救援左腕の低めの変化球を完ぺきに捉えて、「これぞホームラン!」という大きな弧を描く打球を左翼席に運んだ。

「結果はたまたま本塁打になりましたけど、とりあえず自分がやりたいことを試合でやるってだけで、今はあまり結果は気にしてないんで。今、自分がどういう状況なのかってのは毎試合、把握してる。それで次、どういう感じで行けばいいかなっていうところ。そういう意味では、練習でやってることが今日は全打席で出せたんで、良かったと思います」

 日本開幕まで1週間あまり。ドジャース大谷の狂騒曲が待ち構える中、慌てず、騒がず、言わば、「虎視眈々」。

 仔熊の皮を被った猛獣が、息を殺し、低く身構え、獲物を見つめている――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

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