――引退試合となった日本でのゲームも見たのかな?
もちろんだよ! ファンの彼に対するジェスチャーはファンタスティックだった。みんなに心から感謝されている、とイチローが感じたことを願っている。僕が見た限り、彼がそう感じていないとはとても想像できなかったけど。
――イチローのことを少なからず知っているあなたは、引退後の彼はいったい何をして生きていくと思う?
「ベースボールを止める時は死ぬ時だ」なんて話していたよね(笑)。殿堂入りセレモニーで僕らは彼の姿を目にすることになるんだろうな。そして、何をやるにしても、彼は次に情熱を傾けることにも全力で挑み、忙しい日々を過ごし続けるだろうね。 ――すべてを振り返って、彼の言葉で特に印象に残っているものがあれば教えてもらえるかな?
とにかく印象に残っているのは、イチローは常にエネルギーに満ちた人だったということ。そういった人たちは何か特別なことを言う必要はなく、姿そのものを目にすることが周囲の人間には勉強になる。僕は彼のボディ・ランゲージ、日々の準備、集中の仕方、目の中に宿った光を目撃することができた。何より、このゲームに特別な情熱を抱いた人だった。ユニフォームを脱ぐその日まで、可能な限り最高のプレーをしようと挑み続けた。そして、その目標を達成したんだ。僕が“フェイバリット・プレイヤー”と呼べる選手は片手で数えられるくらいだけど、イチローは間違いなくその中に含まれるよ。
――今日はゆっくり話を聞かせてくれてどうもありがとう。
こちらこそありがとう(ここで立ち上がり、深くお辞儀をする)。
――そのお辞儀はどこで覚えたの?
僕の弟と奥さんが2週間前に日本に行ったんだ。日本の人たちはみんな礼儀正しくて、鹿までが同じだったって。鹿に食べ物をあげたら、その鹿がお辞儀するビデオが弟から送られてきてね。(ここでスマートフォンを取り出し、筆者にビデオを見せて爆笑)。面白いだろ? 弟は日本では素晴らしい経験ができて、僕も行くべきだと言われたよ。
――イチローに連絡して日本観光のアドバイスを聞くのもいいかもしれないね(笑)。
考えたこともなかったが、それはいいアイデアだ(笑)。
◆ ◆ ◆
「今日はボトーにインタビューしたいんだ」。ボトーと旧知の友人カメラマンにそう告げると、「きっといい話が聞けるはずだよ」と言われた。彼の“予言”どおり、憧れのヒーローに関して話すのは大好きだった様子。実に思慮深く、一言一言、慎重に言葉を選びながら興味深い話を聞かせてくれた。終了後の「お辞儀」も含め、最初から最後までこれだけ好意的なインタビューはなかなかあるものではない。
取材・文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
※『スラッガー』2019年9月号より転載。
もちろんだよ! ファンの彼に対するジェスチャーはファンタスティックだった。みんなに心から感謝されている、とイチローが感じたことを願っている。僕が見た限り、彼がそう感じていないとはとても想像できなかったけど。
――イチローのことを少なからず知っているあなたは、引退後の彼はいったい何をして生きていくと思う?
「ベースボールを止める時は死ぬ時だ」なんて話していたよね(笑)。殿堂入りセレモニーで僕らは彼の姿を目にすることになるんだろうな。そして、何をやるにしても、彼は次に情熱を傾けることにも全力で挑み、忙しい日々を過ごし続けるだろうね。 ――すべてを振り返って、彼の言葉で特に印象に残っているものがあれば教えてもらえるかな?
とにかく印象に残っているのは、イチローは常にエネルギーに満ちた人だったということ。そういった人たちは何か特別なことを言う必要はなく、姿そのものを目にすることが周囲の人間には勉強になる。僕は彼のボディ・ランゲージ、日々の準備、集中の仕方、目の中に宿った光を目撃することができた。何より、このゲームに特別な情熱を抱いた人だった。ユニフォームを脱ぐその日まで、可能な限り最高のプレーをしようと挑み続けた。そして、その目標を達成したんだ。僕が“フェイバリット・プレイヤー”と呼べる選手は片手で数えられるくらいだけど、イチローは間違いなくその中に含まれるよ。
――今日はゆっくり話を聞かせてくれてどうもありがとう。
こちらこそありがとう(ここで立ち上がり、深くお辞儀をする)。
――そのお辞儀はどこで覚えたの?
僕の弟と奥さんが2週間前に日本に行ったんだ。日本の人たちはみんな礼儀正しくて、鹿までが同じだったって。鹿に食べ物をあげたら、その鹿がお辞儀するビデオが弟から送られてきてね。(ここでスマートフォンを取り出し、筆者にビデオを見せて爆笑)。面白いだろ? 弟は日本では素晴らしい経験ができて、僕も行くべきだと言われたよ。
――イチローに連絡して日本観光のアドバイスを聞くのもいいかもしれないね(笑)。
考えたこともなかったが、それはいいアイデアだ(笑)。
◆ ◆ ◆
「今日はボトーにインタビューしたいんだ」。ボトーと旧知の友人カメラマンにそう告げると、「きっといい話が聞けるはずだよ」と言われた。彼の“予言”どおり、憧れのヒーローに関して話すのは大好きだった様子。実に思慮深く、一言一言、慎重に言葉を選びながら興味深い話を聞かせてくれた。終了後の「お辞儀」も含め、最初から最後までこれだけ好意的なインタビューはなかなかあるものではない。
取材・文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
※『スラッガー』2019年9月号より転載。