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MLB

イチローと大谷翔平。日本が生んだ2人の天才はいかにしてMLBの「頂点」を極めたのか?〈SLUGGER〉

出野哲也

2021.11.20

19年の引退会見で大谷(左)について「世界一の選手にならなきゃいけない」と語っていたイチロー(右)。そんな後輩がMVPを受賞したいま、何を想うのだろうか。(C)Getty Images

19年の引退会見で大谷(左)について「世界一の選手にならなきゃいけない」と語っていたイチロー(右)。そんな後輩がMVPを受賞したいま、何を想うのだろうか。(C)Getty Images

 しかし今、柳田悠岐(ソフトバンク)や佐藤輝明(阪神)のように、日本球界でも三振を恐れることなくフルスウイングを貫く打者が増えつつある。大谷のメジャーでの大成功は、こうした時代の変化の象徴と言ってもいいかもしれない。まだ主流とは言えないものの、彼らに続く選手が次々と現れれば、日本人の野球観は根本的にとは言わないまでも、大きく変わるかもしれない。

 もうひとつ、時代の変化を象徴するデータがある。これまでのMVP受賞者で最も打率が低かったのは、遊撃守備の名手マーティ・マリオンの・267(44年)だったが、大谷はおそらくこの記録を塗り替える、ということだ。

 大谷は投手との二刀流が評価されてMVP候補になっているのだから、打率だけで単純に比較はできない。けれども、15年前なら「いくら何でも打率が低すぎる」としてMVPに反対する声は出てきただろうし、大谷ももっと確実性を高めるスウイングを求められていたはずだ。

 その点、イチローがMVPになった01年は、セイバーメトリクスはそれほど浸透しておらず「ルーキーで首位打者」はそれだけで相当なインパクトがあった。しかしながら、OPSはリーグ28位どまりで、あと数年メジャーに来るのが遅かったら受賞できていなかった可能性もある。

 打者としてだけでなく、大谷は投球においても現代MLBの潮流を忠実に反映している。「筋肉をつけすぎるのは投手にとっては邪魔」などと(主に日本で)批判されながらも肉体改造に勤しみ、さらには最先端のトレーニング施設であるドライブライン・ベースボールを訪ねてデータ収集・分析に努め、故障の危険が少ない新投球フォームを完成させた。

 時代の趨勢に進んで適応したことが、成功の最大の要因となったのだ。コントロールは多少不安定になっても、100マイル近い剛速球と「最も攻略が難しい球種」に数えられるスプリッターで三振を奪いまくる投球スタイルも、まさに現代MLBのトレンドを反映している。
 
 イチローは引退記者会見の席で、近年のMLBが「頭を使わなくてもできてしまう野球」になりつつあると苦言を呈して反響を呼んだ。そして、「頭を使わない野球」の一例として、ギャロのような打者が増えたことを挙げる人も少なくない。

 大谷の打撃も、一見すると大雑把のように思える。だが、大谷は自らの持ち味を最大限に生かし、打撃の生産性を最も高めるために現在のスタイルに行き着いたに過ぎない。そして、実際に球界屈指の強打者へと成長した。その意味では、イチローが「打者・大谷」をどのように評価するのか興味深いところではある。

 イチローは強固な意志を持ち、「自分を変えずに」唯一無二の領域に達した。逆に大谷は、柔軟な精神で「自分を変え続けて」史上最高と称されるほどのシーズンを過ごした。2人は、どちらも自らの能力を最大限に発揮できる方法を突き詰め、まったく別のルートから頂点を極めたのだ。

文●出野哲也
※『スラッガー』2021年11月号増刊『大谷翔平2021シーズン総集編』より転載

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