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「MVPや得点王より優勝の方がずっといい」第3の男に徹し栄華を極めた“ビッグゲーム・ジェームズ”のキャリア【レジェンド列伝・後編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2025.10.10

第3の男として、ウォージーは最高のキャリアを送った。(C)Getty Images

第3の男として、ウォージーは最高のキャリアを送った。(C)Getty Images

■大舞台になるほど実力を発揮する稀有な才能

 2年目には先発に定着し、ファイナルで仇敵ボストン・セルティックスと初めて対戦した。最初の3試合は好調だったウォージーだったが、第4戦の終盤、ボストンの選手と観客が一体となった野次に動揺し、大事なフリースローを外してしまう。

「汚いやり方だとは思うけど、勝つためなら何でもするというのが、セルティックスが勝ってきた理由なんだろう」

 オーバータイムでもインバウンズパスをスティールされ、この試合に敗れたレイカーズは7戦でシリーズも落とした。ウォージーにとっては苦い経験だった。

 翌1985年もファイナルでセルティックスと対戦し、第1戦で34 点差の大敗を喫する。第2戦の試合前には、ジャバーが初戦の不出来をチームメイトに謝罪する一幕があったが、この時は普段大人しいウォージーも声をあげた。

「彼は『レイカーズらしいゲームをしようじゃないか!』と言ったんだ。別に何てことない内容に聞こえるけれど、それで気づかされたんだ。いかに自分たちが、普段通りのプレーをできていなかったかということにね」(マイケル・クーパー)

 屈辱をバネとして奮い立ったレイカーズは、6戦でセルティックスを撃破。ウォージーのファイナル平均23.7点は、レギュラーシーズンの17.6点を大きく上回った。ファイナルMVPはジャバーが受賞したのだが、真に受賞すべきはウォージーの方だとの声も上がった。
 
 ともあれ、この大活躍をきっかけにウォージーは「舞台が大きくなればなるほど、局面が重要になればなるほど実力を発揮する」(ヘッドコーチのパット・ライリー)との評価が定着し、やがて彼は“ビッグゲーム・ジェームズ”の異名で呼ばれるようになった。

「私に言わせれば、プレーオフでは成績が良くなって当たり前なんだ。レギュラーシーズンのように移動もないし、毎試合同じ相手と当たるんだから」とウォージーは事もなげに言っていたが、それは当然などではなく、ごくわずかな選手のみに与えられた資質だった。

 1986年からは毎年オールスターに選ばれ、名実ともにスター選手の仲間入りを果たす。それでもウォージーの性格は変わらなかった。

「彼は家でもすごく静かな人。負けて帰ってきても何かに当たり散らしたりはしないわね」(アンジェラ夫人)

「世の中にはバスケットボールの試合に負けるより、ずっと不幸なことが起こっている。アフリカでは今も多くの人が飢えに苦しんでいるんだから」

 この発言のように、物事を俯瞰的に眺めることができたのも、ウォージーがどんな状況でも冷静にプレーできた理由だったかもしれない。
 
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