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NBA

アイザイア・トーマス――苦難を乗り越え輝いた“バッドボーイズ”ピストンズのリーダー【レジェンド列伝・前編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2025.10.06

少年時代は貧困、NBA入り後は孤軍奮闘など、数々の苦難を乗り越えトーマスはスターダムを駆け上がった。(C)Getty Images

少年時代は貧困、NBA入り後は孤軍奮闘など、数々の苦難を乗り越えトーマスはスターダムを駆け上がった。(C)Getty Images

 NBAの元スーパースターの中でも、アイザイア・トーマスほど現役時代と引退後の評価に落差があった人物はいないのではないか。

 ニューヨーク・ニックスのチームプレジデントに就任以降、次から次へ使えない選手と高額契約を結ぶ。ヘッドコーチを兼務しても、まったく成果は上がらない。挙句の果ては元従業員の女性からセクシャルハラスメントで訴えられ有罪判決を食らう……。

 まさしく踏んだり蹴ったり。ニックス退団後、他のNBAチームから再就職の声が一切かからなかったのも、これでは無理もなかった。

■青春時代の苦難を乗り越え、見事に才能を開花させた天才

 トーマスが生まれ育ったのは、シカゴでも最貧困層が住むゲットー。麻薬と暴力が日常の世界で、トーマスの母親メアリーは父親のいない10人家族をたくましく育てていた。 町を支配するギャングが子どもたちを勧誘にやってきた時も、ショットガンを突きつけて追い払うほど肝の据わった母親だった。
 
 兄弟の中には道を踏み外す者もいたが、幸いにもアイザイアにはバスケットボールの才能があった。名門インディアナ大に進学し、闘将ボビー・ナイトの下で徹底的にポイントガードとしての基礎を叩き込まれ、2年生時に見事NCAAトーナメントを制覇した。

「貧しさから抜け出すにはバスケットボールしかない」

 家計を支えるためにも、1981年のドラフトヘアーリーエントリーしたトーマスの意中の球団は、地元のシカゴ・ブルズ。全体1位指名権を持っていたダラス・マーベリックスには最初から行かないことを明言していた。トーマスを諦めたマーベリックスは、代わりに彼と小学校時代からの親友であるマーク・アグワイアを指名した。

 トーマスは2位指名権を持つデトロイト・ピストンズ行きも渋っていたが、強行指名を受けて入団を決意。「いつかこのチームを、ボストン・セルティックスやロサンゼルス・レイカーズにも負けないチームにする」と記者会見で力強く語った。

 しかし、当時のピストンズには、トーマスがどれほど巧妙にオフェンスを組み立ててもシュートを決められる選手がいなかった。仕方なく自ら得点を稼げば、ショットを打ちすぎだと言われる始末。やる気を失って大学に戻ろうかと考えたこともあった。
 
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