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「選手が最もプレーしたいHC」1位の“独裁者”リバース。カリスマ指揮官は名声を不動にできるか【NBA名脇役列伝・後編】

出野哲也

2020.03.13

自分の意見を決して曲げないリバースはさながら“独裁者”だが、「選手が最もプレーしたいHC」では1位に輝いている。(C)Getty Images

 現役ヘッドコーチ(HC)のなかでも、ドック・リバースは最も高く評価されている指導者の1人だ。2008年にボストン・セルティックスを優勝に導くと、2013年には采配能力を高く買っていたロサンゼルス・クリッパーズが、ドラフト指名権と引き替えでセルティックスから獲得したほど。その才は現役時代から際立っており、所属した4球団すべてでプレーオフへ進出するなど、優れた統率力を持つ選手と見られていた。そんな頭脳明晰な男のキャリアを紐解いていく。
 
■1988年にセルティックスを土壇場まで追い込むが…

 リバースが所属していたアトランタ・ホークスは、1986年から4シーズン連続で50勝超えを記録。しかし、看板選手のドミニク・ウィルキンスやリバース、ケビン・ウィリスらがどれほど奮闘しても、当時のイースタン・カンファレンスはセルティックス、デトロイト・ピストンズら強豪がひしめき、なかなか上位に食い込めなかった。

 それでも1988年のカンファレンス準決勝で、彼らはセルティックス相手に歴史に残る名勝負を演じる。リバースが22アシストのハイパフォーマンスを見せ、第4戦をものにしたホークスは、2勝2敗のタイで迎えた第5戦も敵地で勝利。カンファレンス・ファイナル進出に王手をかけた。

 だが、結局イーストの頂点に辿り着くことはできなかった。第6戦もリバースが32得点と爆発したが、チームは2点差で惜敗。雌雄を決する第7戦は、ウィルキンスとラリー・バードが壮絶なシュート合戦を演じ「アトランタの街が、これほどスポーツで盛り上がったことはなかった」とリバースが振り返るほどの大激戦だったが、またしても2点差で敗れ、セルティックスの軍門に下った。

 第7戦の残り時間わずか、1点ビハインドの場面でリバースはダニー・エインジのショットをブロックしたが、無情にもゴールテンディングがコール。このプレーについてリバースは「あれはブロックだった。ビデオでも確認したから間違いない。トム・ハインソーン(セルティックスびいきで知られた解説者)でさえ俺に同意しているくらいだからね」と話している。

 最終戦で16得点、18アシストと大活躍したにもかかわらず「ひどい出来だった記憶しかない」と語ったリバース。それほど彼にとっては悔しさの残る一戦だった。
 
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“独裁者”と評されながらも「選手が最もプレーしたいHC」の1位に