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【NBAデュオ列伝】ウィリアムズの数少ない理解者だったウェバー。3年でコンビ解散も、残したインパクトは濃密で鮮烈|後編

出野哲也

2020.07.29

ウェバー(左)とウィリアムズ(右)のゴールデンコンビはわずか3年で解散を迎えたが、2人の華麗なコンビプレーはファンに強烈なインパクトを与えた。(C)Getty Images

奔放なプレーに自らも翻弄されていったウィリアムズ

 クリス・ウェバーはスタープレーヤーとしての地位を着実に固めていったが、ジェイソン・ウィリアムズは2年目のシーズン、一転して非難の的となった。ナイキのCMに起用されるなど人気は高まる一方だったが、それが慢心を呼び、ほとんどトレーニングを積まないまま開幕を迎えてしまったのだ。

 才能だけでプレーできるほどNBAの世界は甘くない。ルーキーシーズンに築き上げた人気と実力のバランスは徐々に崩れ始めた。必要のない場面でもトリッキーなパスを繰り出そうとした結果、ターンオーバーの数はリーグワースト3位の296個を計上。オープンの選手がいるのに無理なシュートを放ち、リーグ2位の試投数505本を数えた3ポイントは、わずか28.7%の成功率しか記録できなかった。

 こうした無軌道なプレーぶりに加え、ディフェンス面での成長も見られず、首脳陣の信頼は失われていった。「俺にとってはチェストパスより、ビハインド・ザ・バックパスの方がより簡単で、自然にできるんだ。別に目立とうとしてやってるわけじゃない」とウィリアムズは主張したが、味方が取れないようなパスでは意味がない。リック・アデルマンHCに「一度でいいからまともなパスをやってみろ」と諭されても従わず、チームの中でも浮き始めていった。

 そうした逆風の中にあって、ウェバーは数少ない理解者であった。
 
「ジェイソンが難しいプレーを簡単にやってのけるんで、嫉妬する連中がいるのさ。俺たちはマジックやバードを見て育ってきたんだから、彼らよりすごいプレーができたっておかしくないんだ」

 彼自身、ウォリアーズやウィザーズでは必要以上に批判にさらされた苦い過去があっただけに、ウィリアムズの置かれている立場がよく分かったのかもしれない

 3年目の2000-01シーズンも、ウィリアムズは薬物検査にひっかかって開幕から5試合の出場停止となった。これに懲りたか、復帰後はコーチの求めに従ってより抑制の利いたプレーを心がけたが、一度失われた信頼は元には戻らなかった。

 一方、契約最終年のウェバーはキャリアハイの平均27.1点を稼ぎ、オールNBA1stチームに初選出。MVP投票でも4位に食い込む大活躍を見せた。3年目のペジャ・ストヤコビッチも平均20点以上と成長し、球団記録タイの55勝をマークしたキングスだったが、プレーオフではカンファレンス準決勝でロサンゼルス・レイカーズに4連敗を喫した。

 冴えないプレーに終始したウィリアムズは、「ここが自分の居場所かはわからない」と不満を口にし、その言葉通り、シーズン終了後にバンクーバー(現メンフィス)・グリズリーズのマイク・ビビーとの交換トレードが成立した。FAとなったウェバーは再契約に応じたが、ウィリアムズとのゴールデンコンビはわずか3年で解体された。