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【名作シューズ列伝】与えられたのは後輩のモデル。リッチモンドが“代役”として着用した「NIKE AIR FLIGHT」の裏事情

西塚克之

2020.08.12

NBAでは勝利に恵まれなかったリッチモンドだが、キャリアの最終年に所属したレイカーズで優勝を経験した。(C)Getty Images

 人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり! 

 ドリームチームIIIのシグネチャーモデル第6弾、本編22箱目は、ミッチ・リッチモンドが着用したオリンピックモデル「NIKE AIR FLIGHT」のお話です。

 リッチモンドは、1965年6月30日、アメリカ合衆国フロリダ州フォートローダーデイルで生まれました。カンザス州大を卒業した1988年のNBAドラフト1巡目5位でゴールデンステート・ウォリアーズに指名されると、1年目から平均22点、4.2アシスト、5.2リバウンドの好成績を残して新人王を獲得。その後、クリス・マリンとティム・ハーダウェイとともに"ランTMC"と呼ばれるハイスコアリングトリオを結成し、センセーションを巻き起こしました。

 しかし1991年にサクラメント・キングスにトレード。当時のキングスはドアマットチームでしたが、リッチモンド自身は毎年安定した数字を残し続け、95年のオールスターゲームでMVPを手に。実力はもちろんのこと人間としても素晴らしく、アトランタ五輪のアメリカ代表にも選出されました。
 


 彼に用意されたシューズは「AIR FLIGHT」。デザインから前回紹介したペニー・ハーダウェイの「AIR ZOOM FLIGHT 96」の廉価版と思われがちですが、「AIR ZOOM FLIGHT 95」(ジェイソン・キッドの準シグネチャー)との"ハーフ&ハーフ"的な位置付けが正しいと思われます。

 そもそも、「AIR FLIGHT」は、キッドのために開発されたモデルでした。「AIR ZOOM FLIGHT 95」にあるミッドソールの目玉状カーボンパーツを想起させるデザインが施されていたり、キッドもNBAではチームカラー(ダラス・マーベリックス)の「AIR FLIGHT」を着用していたことからも、そのことが伺えます。

 しかし、残念ながらキッドがアメリカ代表に選ばれることなく、NIKEの契約選手でメンバーに選ばれたリッチモンドが"代役"として着用することになったのです。



 テクノロジーは、ヒールに"AIR SOLE UNIT"が入っていること以外、特筆すべき部分はありません。