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「彼はカメレオンだ」欧州で6か国7クラブを渡り歩き、NBAの優勝請負人となったPJ・タッカーの“這い上がり”の歴史<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.05.20

37歳という年齢を感じさせない運動量とタフネスでヒート不動の先発を務めるタッカー。これも欧州での武者修行があったからこそだろう。(C)Getty Images

 いよいよカンファレンス・ファイナルが幕を開けた。マイアミ・ヒートとボストン・セルティックスが対戦するイーストでは、まずはヒートが先手を取った。

 この試合では、大黒柱のジミー・バトラーが41得点の大活躍を見せたが、今季のヒートで欠かせない働きをしている重要なメンバーが、 チーム最多の83試合(レギュラーシーズン70試合+プレーオフ13試合)に先発出場しているPJ・タッカーだ。

 今月で37歳になったNBA11年目のタッカーの今季のスタッツは、平均7.6点、5.5リバウンド、2.1アシストと、数字だけ見れば凡庸かもしれない。しかし、実際の貢献度はそうした数字で語れるものではない、などと言うまでもなく、彼はすでに世のバスケファンから絶大な評価を勝ち得ている。

「タッカーを表現するなら"ウィナー"だ」と称したのは、ヒートのエリック・スポールストラHC(ヘッドコーチ)だ。
 
「しかも彼はそれをコートの両エンドでやってのける。彼のヴァーサタリティー(万能性)は素晴らしい。人は彼を"ディフェンダー&コーナー3ポイントシューター"だと見ているかもしれないが、彼はそれよりはるかに多くのことをやってくれている。

 オフェンスではより多くのポゼッションをゲットし、彼のポストプレーのおかげでテンポをコントロールできる。バム(アデバヨ)がファウルトラブルのときには5番(センター)をやってくれるし、3番(SF)、4番(PF)、またはガードにだってシフトできてしまう。彼はカメレオンだ」

 トレイ・ヤングを9得点に抑えたアトランタ・ホークスとのプレーオフ1回戦第4戦の後、ヒートの指揮官は手放しでタッカーを称賛した。

 実際、チームスポーツにおいて、ヴァーサタイル=多才な選手というのは非常に貴重な存在であり、指揮官にとってはチームにいたら実に頼もしい存在だ。

 ミルウォーキー・バックスに所属していた昨プレーオフのカンファレンス準決勝で、ブルックリン・ネッツのエース、ケビン・デュラントを苦しめたタッカーの猛烈なディフェンスを記憶している人も多いだろう。
 
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2006年にドラフトされるも、出場機会に恵まれず翌年に欧州へ