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“大学のオファーゼロ”から“NBAファイナルのヒーロー”へ。逆境を乗り越えたデリック・ホワイトの叩き上げキャリア<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.06.06

ファイナル第1戦でヒーローとなったホワイト。サイズ不足で大学のオファーを得られなかった高校時代からは考えられないほどの“大出世”だ。(C)Getty Images

 ついに始まった2021-22シーズンのNBAファイナル。第1戦は最終クォーターに怒涛の追い上げを見せたセルティックスが見事な逆転勝利を収めたが、試合終盤の重要な局面、値千金の3ポイントを連続で沈めたのは、シックスマンのデリック・ホワイトだった。

 今年2月のトレードで入団したばかりのホワイトは、ポストシーズンを戦うチームにとって貴重な戦力となっている。この試合でも、8本中5本の長距離砲を決めたホワイトを、試合後にセルティックスのイーメイ・ユドカHC(ヘッドコーチ)は絶賛した。

「彼はあらゆることをやってくれる。もちろん、5/8の3ポイントもだし、クリエーション、シューティング、ディフェンスもだ。彼のサイズと守備面での多才さ、他の選手を巻き込むクリエイティブさのおかげで、マーカス(スマート)をベンチに下げている間も、レベルはそれほど下がらずに済んでいる。彼のオフェンスでのアグレッシブさは、今夜の我々にとって絶大な威力を発揮した」
 
 今季の最優秀守備選手賞に選ばれたスマートの不在の影響を感じさせない、というのは、最高の褒め言葉だろう。なにより、"サイズ"を理由にNCAAの大学への推薦も得られなかったホワイトにとっては、自分がNBAファイナルのステージに立っていること自体、夢のような出来事に違いない。

 コロラド出身のホワイトにとってNBAファイナルのイメージとは、2004年、地元の英雄チャンシー・ビラップスが、勇ましくデトロイト・ピストンズを牽引する姿だった。

「コロラド出身の選手がこんな大舞台で活躍しているなんてすごい!」

 もうすぐ10歳になろうかというデリック少年は、目を輝かせてテレビにかじりついていたという。

"いつかビラップスのバッシュを履いてプレーしたい!"と願っていた小柄な少年は、高校時代はチームのエースとして地元リーグで活躍。しかし、4年生大学からスカウトのお声はかからなかった。

 父リチャードは、息子のハイライトシーンを集めたDVDをアメリカ中の大学チームに送ったが、183センチ・70キロという彼のサイズを見ただけで「NCAAには小さすぎる」。返事が来ればまだいい方で、ほとんどの学校からは反応すらなかった。
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