来年のNBAドラフトで１位候補に挙げられているフランスの新星、ヴィクター・ウェンバンヤマの株が急上昇中だ。
　
　現地時間10月４日、６日に行なわれたGリーグチームとのエキシビジョンマッチでフランスのメトロポリタン92に所属するウェンバヤマは、初戦で37得点、４リバウンド、５ブロック、第２戦でも36得点に11リバウンド、４アシスト、４ブロックという圧巻のスタッツを残した。

　この圧巻のパフォーマンスにNBAのスター選手も反応。ロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームズは「一世一代の才能の持ち主」と称賛すれば、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーはメディアに「彼は堅実だね」と切り出し、超人気ゲーム『NBA 2K』になぞらえていた。

「彼はまるで2Kの（ゲームの）中でクリエイトした選手みたいだ。ポイントガードは皆、７フィート（213㎝以上）になりたがる。もう隠しコマンドでも使って創り上げたような感じさ。観ていてすごく楽しいよ。イグナイト相手に楽しいエンターテインメントを提供してくれた。すごかったよ」
  　カリーはこのように語ったが、現役NBA選手の中にも、まるでゲームから飛び出てきたようなプレーをする選手たちがいるのは事実。今年２月のオールスターで16本の３ポイントを沈めて50得点をマークしたカリー、３ポイントラインからわずか１ドリブルでダンクまで持ち込んでしまうヤニス・アデトクンボ（ミルウォーキー・バックス）、コート全体を俯瞰し、圧巻のノールックパスで魅せるルカ・ドンチッチ（ダラス・マーベリックス）がその筆頭だろう。

　その点、ウェンバンヤマもこれまでに見たことがないと言えるほど特殊なプレースタイルの持ち主なのは間違いない。ブルックリン・ネッツのケビン・デュラントを10㎝以上も上回る身長ながら、ペリメーターで同じようなプレーができてしまうのだから末恐ろしい。

　もっとも、昨季のファイナルMVPからの絶賛にも18歳のウェンバンヤマは動じない。

「もちろん、あんなすごい人たちが僕について話してくれるなんて光栄だね。けど僕のやることが変わることはない。僕はフォーカスし続けるよ。それは…自分がまだやっていないことに対してね」

　ポストでプレーするためのスキルやフィジカル面など、これから強化していく部分もあるとはいえ、ウェンバンヤマの才能に惚れ込むチームや選手は多いことから、来年のドラフトに向けて今後もスポットライトを集めることになりそうだ。

文●秋山裕之（フリーライター）