アレン・アイバーソンと言えば、公称183cmの小さな身体で得点王に輝くこと４回、通算２万4368得点を叩き出した2000年代のNBAを代表する名スコアラーだ。

　大男たちに果敢に立ち向かう姿は観る者の心を打った。一方で、歯に衣着せぬ言動は時に誤解を招いた。しかし、元チームメイトで現在はニューオリンズ・ペリカンズを率いるウィリー・グリーンHCは、かつての相棒を改めて称賛している。

　アイバーソンは天性のスピードとバネ、そして劣悪な環境で鍛えられた強靭な精神力によって、バスケットボールでは致命的な欠点となりかねない身長のハンディキャップをカバーした。2000－01シーズンにはMVPに輝き、フィラデルフィア・76ersをNBAファイナルへ牽引。引退後の2016年には殿堂入りも果たしている。

　キャリア平均得点は歴代７位の26.7点。勝負所では自らゴールを狙っていた印象が強いが、決して唯我独尊のスタイルではなく、グリーンによればチームメイトを信頼していたという。

　2003年から３年半、そして2009－10シーズンに76ersでアイバーソンと同僚だったグリーンは、ケビン・ガーネットのポッドキャスト『KG Certified』に出演した際に「まず、アレンは歴代でも私の大好きなバスケットボール選手の１人であり、チームメイトだ」と言及。そして、こうリスペクトの意を示した。
  「彼と一緒にいることは、それだけ学ぶチャンスがある。アレンは決して諦めることなく、相手に立ち向かっていった。執拗なほどにね。でも、それは決してチームメイトを信頼していなかったわけじゃない。その点では、違った評価をされている」

　グリーンは、アイバーソンのバックアップとして53試合に出場した2003－04シーズンに忘れられない出来事があったと回想する。

「ルーキーの時にある出来事があった。アレンが私にボールを渡して、彼にすぐにパスを返した。アレンは『俺がパスをしている時は、君にアクションしてほしいからボールを渡しているんだ。心配するな、ゲームが終わる頃には俺は30得点あげているから。君が何かをやれると信じている』と言ってくれた。

　それは私に多くのことを教えてくれた。このマインドは、（現在率いているペリカンズの）ブランドン（イングラム）やＣＪ（マッカラム）、ザイオン（ウィリアムソン）と共有している。周囲を信頼し、いいプレーヤーになるのを手助けすることで、自分も成長していく。当然、ゲームのなかでシュートを打たなければいけない時はあるが、正しいプレーをし続けないといけない」

　チームメイトを信頼し、自らも勝負所でチームを救う仕事をこなす――。グリーンにとって、アイバーソンは真のプロフェッショナルだったようだ。

構成●ダンクシュート編集部