NBA

八村塁の活躍がテレビで見られないのはなぜ?変わりゆくスポーツ放送ビジネスの舞台裏

石田英恒

2019.11.30

開幕からスタメン出場を続ける八村の活躍は現地でも高く評価されている。しかし、日本のテレビでは、あまりそのプレーを見かけることはない。(C)Getty Images

 NBA八村塁の活躍が地上波で見られないのはなぜか?

 その理由は、テレビのスポーツ放送に新しい流れが生まれつつあるためだ。

 NBAのワシントン・ウィザーズ入りした八村が、17試合連続で先発出場し(11月30日時点)、レギュラーとして予想以上の大活躍をしている。しかし、八村のNBAの試合での活躍シーンは、地上波では流れていないわけではないが、活躍の割には非常に少ない。八村の試合のニュース映像が少ないことに、どうしてだろうと疑問を持って地上波を視聴しているスポーツファンの方も多いかもしれない。

 NBAの放送権は、楽天が2017年に5年契約で獲得していた。八村が2019年にNBA入りする前の2017年に放送権を獲得したことで、安い買い物だったとも言われているが、5年契約で約250億円という大きな金額だ。放送権を購入した楽天は、現在、Rakuten TV(楽天TV)でNBAを配信している。

 楽天TVは、放送事業者ではない。Jリーグや海外サッカーをはじめとしたスポーツ動画配信のDAZN(ダゾーン)や、ドラマや映画を中心としたNetflix(ネットフリックス)、Hulu(フールー)などと同じく動画配信サービス事業者である。視聴するためには料金を払って契約をしなければならないが、パソコンやスマホで、自分の好きな時間に気にいった動画を気軽に見られることから、近年、これらの動画配信サービスは、若い層を中心に人気を集めている。
 
 地上波で八村の試合映像ニュースをあまり見ないのは、地上波放送局が、八村の活躍を伝えるための動画を、基本的に楽天TVから買っていないからだ。

「日本のテレビ界は、例えば、ゴルフの中継映像とマラソンの中継映像を交換したりして、テレビ局間で映像を融通し合い、あらゆるスポーツを網羅してニュースを報道していました。日本のテレビ界が、大きな互助会のようなものでした」とテレビ局関係者は言う。しかし、今回、動画配信サービス事業者が人気スポーツの放送権を持って参入してきた、ほぼ初めてのケースが起きたという。