「アメリカに勝った後の試合は燃え尽きて負ける」
2019年大会のフランス代表(準々決勝でアメリカに勝利も、準決勝でアルゼンチンに完敗)のシナリオは、またも繰り返されてしまった。
9月3日に行なわれた2次ラウンドの第2戦、アメリカを110-104で下したリトアニアは、準々決勝のセルビア戦に68-87で惨敗した。
この試合、リトアニアの大きな武器であるリバウンドは28本に終わったが、何よりもセルビアの戦いぶりが素晴らしかった。ガードへの徹底マークでパスコースを封じて彼らのリズムを狂わせ、リトアニアの得意な攻撃パターンを阻止した。
セルビアは後半に入っても集中を切らすことなく、体力の限りを出し尽くしたかのような渾身のディフェンスで、25得点を許した第1クォーター以降は、13得点、17得点、13得点と、ここまで全試合で90点以上をあげていたリトアニアを、わずか68点に封じ込めた。
リトアニアがワールドカップで70点以下に終わったのは、2014年の準決勝、対アメリカ戦以来(68点)。今大会でも、フィールドゴール成功率はセルビアの55%に次ぐ53.8%を残しており、シュート力自慢のチーム同士の打ち合いになるはずが、見事に封じ込められた形となった。
一方のセルビアはこの試合、特別なモチベーションとともに戦っていた。グループリーグ第3戦目の南スーダン戦で、ゴール下の攻防でフォワードのボリシャ・シマニッチが、ヌニ・オモットに肘鉄を喰らって負傷。
当初は重症ではないと思われたが、検査の結果、肝臓を損傷していることが判明。肝臓を摘出する2度の手術を受けるに至った。
リトアニア戦の朝、チームのもとに入院中のシマニッチから激励のテキストメッセージが届き、そこには、『自分は大丈夫だから心配はいらない。今日の試合に勝とうじゃないか!』と書かれていた。
ナーバスになっていたチームにとって、「これ以上はない励ましになった」と主将のボグダン・ボグダノビッチは試合後の会見で明かした。
「僕らは彼と一緒に戦った。だからこの勝利は彼のためのものでもある」
アンダー世代の代表戦でリトアニアに負けていた経験から、緊張していたというボグダノビッチだが、ゲームハイの21得点をあげただけでなく、絶対的なリーダーとしてチームを牽引した。
大会前のトレーニングキャンプ初日に、「メダル獲得」を目標に掲げたリトアニアは、準々決勝まで5戦全勝と、順調に歩みを進めてきた。その5戦目では、19年ぶりにアメリカを下す偉業も成し遂げた。
チーム最多の14得点、9リバウンドと奮戦したタダス・セデケルスキスは、「アメリカ戦のことはすぐに頭から消した。それについては100%断言できる」と力を込めたが、「アメリカに勝ったのは大きいけど、敗退した今となっては、なんの意味も成さない。一番大事な試合に負けて、メダル獲得の目標を叶えられずに終わってしまった」と続けた。
そしてその横で、カジス・マクスビティスHC(ヘッドコーチ)は「我々はエネルギー、集中力に欠けていた」と俯いた。
アメリカに勝利した勢いを維持できなかったリトアニアと、シマニッチの離脱でチーム一丸となったセルビア――。両チームの明暗が分かれた1戦となった。
文●小川由紀子
2019年大会のフランス代表(準々決勝でアメリカに勝利も、準決勝でアルゼンチンに完敗)のシナリオは、またも繰り返されてしまった。
9月3日に行なわれた2次ラウンドの第2戦、アメリカを110-104で下したリトアニアは、準々決勝のセルビア戦に68-87で惨敗した。
この試合、リトアニアの大きな武器であるリバウンドは28本に終わったが、何よりもセルビアの戦いぶりが素晴らしかった。ガードへの徹底マークでパスコースを封じて彼らのリズムを狂わせ、リトアニアの得意な攻撃パターンを阻止した。
セルビアは後半に入っても集中を切らすことなく、体力の限りを出し尽くしたかのような渾身のディフェンスで、25得点を許した第1クォーター以降は、13得点、17得点、13得点と、ここまで全試合で90点以上をあげていたリトアニアを、わずか68点に封じ込めた。
リトアニアがワールドカップで70点以下に終わったのは、2014年の準決勝、対アメリカ戦以来(68点)。今大会でも、フィールドゴール成功率はセルビアの55%に次ぐ53.8%を残しており、シュート力自慢のチーム同士の打ち合いになるはずが、見事に封じ込められた形となった。
一方のセルビアはこの試合、特別なモチベーションとともに戦っていた。グループリーグ第3戦目の南スーダン戦で、ゴール下の攻防でフォワードのボリシャ・シマニッチが、ヌニ・オモットに肘鉄を喰らって負傷。
当初は重症ではないと思われたが、検査の結果、肝臓を損傷していることが判明。肝臓を摘出する2度の手術を受けるに至った。
リトアニア戦の朝、チームのもとに入院中のシマニッチから激励のテキストメッセージが届き、そこには、『自分は大丈夫だから心配はいらない。今日の試合に勝とうじゃないか!』と書かれていた。
ナーバスになっていたチームにとって、「これ以上はない励ましになった」と主将のボグダン・ボグダノビッチは試合後の会見で明かした。
「僕らは彼と一緒に戦った。だからこの勝利は彼のためのものでもある」
アンダー世代の代表戦でリトアニアに負けていた経験から、緊張していたというボグダノビッチだが、ゲームハイの21得点をあげただけでなく、絶対的なリーダーとしてチームを牽引した。
大会前のトレーニングキャンプ初日に、「メダル獲得」を目標に掲げたリトアニアは、準々決勝まで5戦全勝と、順調に歩みを進めてきた。その5戦目では、19年ぶりにアメリカを下す偉業も成し遂げた。
チーム最多の14得点、9リバウンドと奮戦したタダス・セデケルスキスは、「アメリカ戦のことはすぐに頭から消した。それについては100%断言できる」と力を込めたが、「アメリカに勝ったのは大きいけど、敗退した今となっては、なんの意味も成さない。一番大事な試合に負けて、メダル獲得の目標を叶えられずに終わってしまった」と続けた。
そしてその横で、カジス・マクスビティスHC(ヘッドコーチ)は「我々はエネルギー、集中力に欠けていた」と俯いた。
アメリカに勝利した勢いを維持できなかったリトアニアと、シマニッチの離脱でチーム一丸となったセルビア――。両チームの明暗が分かれた1戦となった。
文●小川由紀子
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