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バスケW杯

集合住宅の中庭に巨大アート、子どもたちは裸足でプレー……W杯開催国フィリピンを象徴する『世界最高のバスケットボールコート』<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.09.11

集合住宅の中庭コートに描かれた巨大アート。過去にはナイキツアーの一環でレブロンも訪れている(右下)。写真提供:レナード・ガレイテス

集合住宅の中庭コートに描かれた巨大アート。過去にはナイキツアーの一環でレブロンも訪れている(右下)。写真提供:レナード・ガレイテス

 ドイツの初優勝で幕を閉じた「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」。今大会の舞台となったのが、日本の沖縄、インドネシアのジャカルタ、そしてメイン会場となったフィリピンのマニラである。

 1978年以来2度目の開催となったフィリピンは、アジアきってのバスケットボール大国だ。そしてその首都であるマニラには、昨年12月、FIBA公認の調査によって選出された『世界最高のバスケットボールコート』がある。

 チームUSAが滞在地に選んだ、マニラ屈指のハイソサエティなエリアから少し南下した場所にある『ザ・テンメント』と呼ばれる集合住宅の中庭にあるコートがそれだ。

 低所得層が暮らすこの場所に構える、一見どこにでもありそうなコートが選ばれた理由は、コート一面に描かれた壁画にある。この集合住宅で生まれ育ったアーティストのレナード・ガレイテス氏が描いた巨大なアート作品が、世界中の人々からの投票を勝ち取ったのだった。
 
 子どもの頃から絵を描くのが好きだったガレイテス氏は、独学でアートを学び、2010年頃からコートに壁画を描き始めた。最も有名な壁画は、コビー・ブライアントと愛娘のジアナ・ブライアントが描かれたものだ。

 2人は2020年、ヘリコプター事故で命を落とした。その悲報を知ったガレイテス氏は、哀悼の気持ちを込めて、10人の仲間たちとともにわずか18時間でこの感動的な壁画を描き上げたのだった。

 それより前の2015年にはレブロン・ジェームズが、翌年にはポール・ジョージ、ロン・アーテスト、そして最近では、フィリピン代表に加わったジョーダン・クラークソンもここを訪れている。

 今現在は、自国開催を記念してコートにW杯仕様のデザインが描かれ、壁にはガレイテス氏が描いた大会マスコットのJIP(ジップ)と、クラークソンの壁画も掲げられている。

 レブロンの訪問を機に、『ザ・テンメント』の存在は一気に知れわたることになったが、ナイキツアーの際に彼がここを訪れることになったのは、ガレイテス氏の遊び心が発端だったそうだ。

 ガレイテス氏はある日、お馴染みのナイキのマークをコート一面に描いた。その噂をナイキ・フィリピンが聞きつけ、ナイキツアーの訪問先に、このコートを選んだのだという。レブロンはここに住むバスケキッズたちと交流し、記念の手形を残している。
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