NBA

熱狂的ファンから名門チームのスタッフへ。18回目の優勝を狙うセルティックスを陰で支える女性データ・アナリスト<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2024.06.01

グラマーレさんはかつてフランスのU16、U18のフランス代表としてプレー。昨年末から幼少期からファンだったセルティックスのデータ・アナリストを務めている。(C)FIBA

 ボストン・セルティックスは、カンファレンス準決勝でインディアナ・ペイサーズをスウィープで退け、2年ぶりのファイナル進出を決めた。イーストの雄は、現地時間6月6日からスタートするダラス・マーベリックスとのNBAファイナルで、史上最多となる18回目の優勝に挑む。

 そんな名門チームを陰で支えるデータ分析チームに、昨年末、天才的な頭脳を持つフランス人女性が加わった。現在23歳のマリア・グラマーレさんは、セルティックスが「データ・アナリスト」を募集した際に、6000も寄せられた応募者の中から選ばれた人材だ。

 ハーバード大卒の頭脳に加え、ユース世代のフランス代表で活躍した元バスケットボール選手とまさに文武両道というわけだ。

 子どもの頃から大のセルティックスファンだった彼女は合格の知らせを受けた際、「感激のあまり幽体離脱したような気分になった」ようで、さらに憧れの選手だったアル・ホーフォードを生で見た時は自分の目が信じられなかったそうだ。

 フランスのスポーツ紙『レキップ』によると、グラマーレさんの父はラグビーの元ルーマニア代表、母はビジネスウーマンで、幼少の頃から自然と読み書きができるようになるなど天才児ぶりを発揮。

 IQテスト151点と、いわゆる"ギフテッド"だった彼女は、飛び級で8歳の時に中学校に入り、15歳で高等教育修了時に受けるバカロレア試験に合格した。
 
 それと並行して、14歳から元NBA選手のトニー・パーカーやボリス・ディーオウらを輩出した国立エリート養成所INSEPでバスケットボールに打ち込み、U16とU18の欧州選手権で銅メダルを獲得している。

 大学時代、彼女はフランスに戻って選手を続けるかアメリカで就職するかで悩んだ末に、コロナ禍でプレー環境が停滞していた影響もあって就職を選択。ボストンを拠点に、人工知能や高度な統計分析を使って病理診断法を開発するスタートアップのバイオ企業『PathAI』にスカウトされた。

 選手のキャリアを諦めて傷心した彼女だったが、この会社での経験、そして、彼女がバスケに未練を残していることを察した友人がセルティックスの求人情報を教えてくれたことが、この夢のキャリアにつながった。

 セルティックスには、バスケットボール界における高度な統計分析のパイオニアとして知られるマイケル・ザレンが在籍し、現在の彼は副社長のポストに就いている。

 ザレンは「統計学に秀でた人もいれば、バスケットボールを科学する才能のある人、コミュニケーション能力が高い人もいるが、それらすべてを兼ね備えている人材はあまり多くない。マリアはその3つすべてを持っていた」と彼女を高く評価。
 
NEXT
PAGE
NBAチームのデータ・アナリストに求められる素質とは