ここ最近、欧州のバスケットボール界で話題となっている、「近い将来、NBAがヨーロッパに進出するのでは？」という説が加熱している。

　その要因の一端は、両大陸のバスケ界のトップ２人の発言にある。

　欧州側では、FIBA（国際バスケットボール連盟）のアンドレアス・ザグリス事務局長が、今月初旬に行なわれたビデオカンファレンスで「NBAがヨーロッパに進出する可能性はあるか？」という質問に対し、「NBA側がどれだけ真剣かは彼らに尋ねるべきだが、興味を示されているのは事実で、実際にNBAとFIBAの間で話し合いも持たれている」と返答。

　これに対しNBAコミッショナーのアダム・シルバーも、先日ラスベガスで開催されたNBAカップ決勝前の会見で、「まだ公式発表を行なう段階ではない。我々の組織内でも何も決定には至っていないが、ヨーロッパでバスケットボールをさらに発展させる大きなチャンスが絶えず存在していることは確かだ」とコメント。さらに次のように続けた。
  「ヨーロッパのバスケットボールの質は素晴らしい。ご存知のように我々（NBA）のトップ選手の多くはヨーロッパ出身だ。しかし我々はヨーロッパにおいて、商業的、あるいはファン向けて、もっと特別なものが実現できるのではないかと考えている」

　NBAの欧州進出という噂自体は前々から存在していたが、ここに来て加速しているのには、両サイドが抱えているいくつかの事情も絡んでいる。

　欧州側では、NBA に次いで世界第２位のリーグと言われるユーロリーグの中核を形成している欧州13クラブのライセンス契約が、来シーズン末に満期を迎えることだ。

　ユーロリーグは、アメリカの大手マネジメント会社IMGと13クラブが2015年末に10年間の契約を締結し、この13クラブが「Ａライセンス保持者」として、成績にかかわらず契約期間中はリーグに参戦できる仕組みになっている。

　この契約が更新を迎えようとしている今、欧州のいくつかのパワーハウスがユーロリーグに反旗を翻さないとも限らない。実際、雄弁家で知られるパナシナイコスのエルギン・アタマンHC（ヘッドコーチ） もつい最近、「パナシナイコスはNBAに招聘されることになるかもしれない。ユーロリーグはうかうかしている場合ではない」という辛辣なジョークを飛ばしている。