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NBA

スティーブ・ナッシュがジョーダンとの対戦を回顧「本当に恐れを抱いた」と当時の心境を告白

秋山裕之

2020.05.08

 トーマスは1997-98シーズンのシカゴ・ブルズを追跡したドキュメンタリー『ザ・ラストダンス』内でも触れられていたように、MJことマイケル・ジョーダンがNBAを制する過程で大きな壁として立ちはだかったピストンズのリーダーだった。その笑顔は“悪魔の微笑み”と称され、勝利するためにはどんな手段も厭わないストイックな面が強調されているものの、歴代屈指のポイントガードだったのは間違いない。

 キャリア13シーズンをピストンズ一筋で過ごし、平均19.2点、3.6リバウンド、9.3アシスト、1.90スティールをマーク。自慢のスピードとクイックネス、変幻自在のボールハンドリングを生かしてディフェンダーを欺いてきたトーマスは、1989、90年にピストンズが連覇を果たす立役者となり、1990年にはファイナルMVPにも輝いた。

 多くの子どもたちがジョーダンに憧れるなかで、ナッシュは自身にとってベストなアイドルを見つけ出し、猛特訓に励んできたようだ。

 では、ナッシュにとってジョーダンはどのような存在だったのか。1996年のドラフトで1巡目15位指名を受けたナッシュは、同期にアレン・アイバーソン(1巡目1位/元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)やコビー・ブライアント(1巡目13位/元ロサンゼルス・レイカーズ)といった、ジョーダンに対して闘志を燃やしていた選手たちもいたが、ナッシュはこう話していた。
 
「当時はインスタグラムやYouTubeがなかったから、MJのことはテレビで観るしかなかったけど、彼がどれほど偉大なのかは知っていたし、そのスキルとメンタリティはカリスマと呼べるものだった」

 ジョーダン率いるブルズとは、ナッシュが最初にサンズに在籍した1996~98年に4回対戦して1勝3敗。当時のナッシュは一介のベンチプレーヤーで、出場時間は多くなかったものの、短いプレータイムのなかでもジョーダンが放つオーラに圧倒されたという。

「彼とプレーしていた時、私はほかの誰とも違うものを感じていた。本当の恐れを抱いたんだ。私はこれまで、(プレーしていて)ぞっとするような選手、ものすごく畏怖の念を抱くような選手は見たことがなかったね」

 ナッシュが対戦した当時、ジョーダンとブルズはディフェンディングチャンピオンであり、リーグきっての老獪なチームだった。経験豊富な選手たちによるプレーの数々は、ルーキーや若手プレーヤーに対し、大きなプレッシャーを与えていたのだろう。

 ジョーダン率いるブルズと対戦した時の心境を率直に表現したナッシュ。それはまるで、アイバーソンやコビーといった一部の選手を除き、多くのプレーヤーたちの気持ちを代弁したかのようだった。

文●秋山裕之(フリーライター)

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