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NBA

トライアングル・オフェンスではジョーダンの得点力がネックに?システムの創始者が語る、ブルズ戦術の舞台裏

北舘洋一郎

2020.05.13

 そもそもトライアングル・オフェンスは、ジョーダンのように突出したスコアラーにボールが集中し、コートにいる5人のバランスを崩さないために採用されたシステムだ。“ジョーダンが史上最強のフィニッシャーであり、ポイントゲッターである”というのがウィンターの考えの根底にある。そしてこの最強の男をどう生かすかが、ウィンターのコーチとしての醍醐味でもあった。

 また、リバウンドの出来不出来は、ブルズの勝敗を大きく左右する要素だった。強力なビッグセンターを擁していないブルズは、パワーフォワードの選手がリバウンダーの役割を担う必要があった。ホーレス・グラントを失い、ロッドマン加入前だった1994-95シーズン、ジョーダンが現役復帰しても本調子のブルズに戻らなかったのはそのためだ。

 当時ブルズを指揮していたフィル・ジャクソン・ヘッドコーチは、ディフェンスを何よりも重要視していた。選手たちに対し「リバウンドで勝てない試合は苦戦する」と、しつこいまでに口にしていたとロッドマンは回顧する。

「フィルには『失点を少なくするために君はここにいる。相手にタフショットを打たせるディフェンスをするようほかの選手には徹底させるから、君はリムからこぼれたボールをとにかく拾ってくれ』とリクエストを出されたんだ」
 
 相手がシュートを外したにもかかわらず、ディフェンシブ・リバウンドを奪えずセカンドチャンスで得点されることを、ジャクソンはとにかく嫌っていた。「オフェンシブ・リバウンドでやり込められることは、自分たちが弱いチームであるという何よりも明らかな証拠だ」とも話している。

「トライアングルにしてもリバウンドにしても、自己犠牲の上に成り立っている。コートに5人しか味方のいないこのスポーツにおいて、自分を犠牲にしてまでもチームで得点し、そしてディフェンスするという意識が選手全員になければ、肝心なところでチームは空中分解する。素晴らしい才能を持ちながらも、自己犠牲の上に勝利があるということを知らないままキャリアを終えていく選手がリーグには意外と多い」

 ジャクソンのこの言葉の正当性は、彼が持つ11個のチャンピオンリングが何よりの証拠となっている。“ジョーダン、ピッペン、ロッドマンと、一流の花形選手がいたからブルズは強かった”。そんな一言では片づけることができない、いくつもの重要な要素がブルズ王朝形成の裏にはあったのだ。

文●北舘洋一郎

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