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NBA

前評判を一蹴し、ブルズの“ラストピース”となったロッドマン。実は気弱で繊細な男の激動の人生【NBAレジェンド列伝・後編】

出野哲也

2020.05.14

ド派手なルックスと実力を兼ね備え、ブルズ時代の人気は世界規模に。特に若者から多くの支持を集めた。(C)Getty Images

ド派手なルックスと実力を兼ね備え、ブルズ時代の人気は世界規模に。特に若者から多くの支持を集めた。(C)Getty Images

■破天荒そのもののロッドマンは前例のないスーパースターに

 ブルズを最強チームとして甦らせたことで、ロッドマン人気は爆発した。これは時代の違いも要素のひとつだった。80年代には全身をタトゥーで彩り、髪を真っ赤に染めているような選手が全国区の人気を集めるなど考えられないことだった。しかしヒップホップ・カルチャーが市民権を得た90年代半ばには、ロッドマンやアレン・アイバーソンらの異端児も受け入れられるようになっていた。「好きなように生きていても、やる時はやる」というロッドマンのイメージは、既存の価値観から大きくはみ出さないジョーダン以上に、若者の目にはクールに映った。

 その後もコートサイドのカメラマンを蹴飛ばして出場停止になったり、敵地のファンを愚弄して非難されたりといくつもトラブルを引き起こしたが、コート上の活躍は続く。97-98シーズンまで7年連続でリバウンド王。この年にユタ・ジャズを下してブルズが3連覇を達成したのも、カール・マローンに対するロッドマンのディフェンスを抜きにしては考えられなかった。
 
 だが、3連覇を置き土産にブルズを去ってからは、ロッドマンの輝きは急速に褪せていった。一時的な引退を経てレイカーズで復帰したが、わずか23試合で解雇。その後ダラス・マーベリックスでプレーした時も短期間しかもたなかった。デイリーやジャクソンのような度量の広いコーチでなければ、ロッドマンを適切に扱えなかったのだ。

 かつては熱狂的に受け入れられた彼のパフォーマンスも、この頃には底の浅さが透けて見えるようになっていた。その後も突然北朝鮮を訪問するなど、スキャンダラスな行動がときおり新聞種にはなったが、メディアに取り上げられる機会も減っていった。時代の先端を行っていたはずのロッドマンは、いつの間にか時代に追い越されてしまっていた。

 “破天荒”という言葉が、ロッドマンの人生にはぴったりだった。その生き方は時には眉をひそめられ、時には歓声で迎えられた。彼の素顔を知る者はみな、実は気弱で繊細な男なのだと口を揃える。ただの不良ではなく、そうした内面を秘めていたことが、ロッドマンがジョーダンとまったく違ったベクトルで不世出の選手となれた理由かもしれない。

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2008年8月号掲載原稿に加筆・修正。

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