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NBA

【NBA名脇役列伝・前編】“ガーネットの人生”を変えた男、マリーク・シーリー。ルーキーイヤーでの珍事件とは

出野哲也

2020.05.20

92年ドラフト1巡目でペイサーズに入団し活躍をみせたものの、2シーズン目の途中でケガをし戦線離脱。(C)Getty Images

92年ドラフト1巡目でペイサーズに入団し活躍をみせたものの、2シーズン目の途中でケガをし戦線離脱。(C)Getty Images

 大学はシラキュースとセントジョンズのどちらかで迷ったが、OBのマーク・ジャクソンの勧誘もあってセントジョンズ大を選択。ここでも中心選手として活躍し、通算2401得点はクリス・マリンより38点少ないだけで同大学史上2位、そして238スティールは堂々の1位である。さらに2年連続でオールビッグイースト・カンファレンスチームに選ばれ、92年にはAP通信選出のオールアメリカン3rdチームにも名を連ねた。

 その92年にドラフト1巡目14位指名を受けてインディアナ・ペイサーズに入団したシーリーだが、プレーオフでとんでもないトラブルに見舞われる。ニックスと対戦するためニューヨークへ遠征した際、彼はスカウティングレポートを克明に記したプレーブックをケネディ空港に置き忘れてしまったのだ。不運にもそのプレーブックはニューヨークのDJの手に渡り、ラジオ番組で内容を読み上げられる事態に……。

「これを彼に返すつもりはない。そもそも開いた形跡があるようにも見えなかったからね。どうしても必要だったらチームメイトに見せてもらえばいいだろう?」

 DJはそう言い放った。
 
「何と言っていいかわからないな。よりによってあんな悪趣味なヤツの手に渡るなんて」とシーリーは吐き捨てたが、そもそも大事なプレーブックを置き忘れたのはシーリーの失態である。当時ニックスのアシスタントコーチだったジェフ・ヴァンガンディに「あのDJをコーチに雇うべきだ。我々のプレーをとてもよく知っているようだからね」と皮肉られても、返す言葉はなかった。

 翌93-94シーズンは汚名返上とばかりに、開幕から絶好調。初戦で27得点をあげ、7戦目からは先発に昇格していた。ところが、12月にケガで1か月間戦列を離れるとそのまま居場所を失い、プレーオフのロースターからも外されてしまう。

「テレビでプレーオフの試合を見る気にもなれなかった。しばらくの間はチームにも帯同せず、家に引きこもっていたよ」

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2013年10月号掲載原稿に加筆・修正。

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